CM出演契約にかかわる4者
アーティストのCM出演そのCMを取り扱う広告代理店と出演するアーティストのプロダクションとの間で結ばれる。

つまりプロダクションは、アーティストのCM出演に関して広告代理店と契約の交渉をすることになる。

そして、契約書の冒頭には、CMを提供する企業名(広告主、クライアント)とCMに出演するアーティスト名が必ず明記される。すなわち、契約書に登場するのは広告代理店、プロダクション、広告主、アーティスト、以上の4者である。

契約書の多くはその第1条において、出演承諾と題して「広告主の商品の広告作品または広告宣伝活動にアーティストを出演させることをプロダクションは広告代理店に対して承諾する」という条文がくる。

登場人物がやたら多いのでわかりにくいが、アーティストヘのCM出演依頼は、広告主→広告代理店→プロダクション→アーティストという経緯をたどるのだ。

したがって、契約の当事者が広告代理店とプロダクションの場合、広告代理店はプロダクションに対して、アーティストの代理人として契約を締結する権限を持っていることを保証させる必要がある。

なぜなら広告代理店はプロダクションとアーティストの間で締結されている専属マネージメント契約の内容を知らないからだ。

CM出演に関する窓口がほかにあったり、あるいはアーティストが個人で行なっていたとしたら、後で大変なことになる。このような場合、広告代理店自身の問題だけではなく、広告主に対しても多大な迷惑をかけるので、契約書には以下のような条文が必ず盛り込まれている。

CM出演契約書(保証)
プロダクションは広告代理店に対し、プロダクションとアーティストの間に別途存在する所属契約に基づき、本契約の締結及び履行のために必要かつ適切な権限を有していることを保証します。

CMの使用範囲に規定される媒体アーティストが出演したCMの使用範囲も必ず盛り込まれる条項である。広告媒体としては、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、SP(セールス・プロモーション)の5つに大きく分けられるが、CM出演契約ではさらに細かく規定されることが多い。CMが使用される用途としては、次のものが一般的である。

CMが使用される用途
テレビ広告
ラジオ広告
新聞広告
雑誌広告
交通広告
野外広告
屋内広告
ポスター
パンフレット
チラシ
テレフォン・カード
POP
ダイレクト・メール
カレンダー
ノベルティ

最近ではインターネットのホームページなどが使用範囲に入ることもある。
ここで少し耳慣れない用語について説明しよう。POPとはPoint of Purchaseの略で、店頭広告のうち、商品の陳列されている棚のように商品に最も近い場所に置く広告のことをいう。

よくレコード店に行くと平積みされたCDのそばに見かける広告、あれがPOPである。次にノベルティとは、広告主が社名や商品名を入れて無料で配布する粗品をいう。英語の本来の意味は“珍しさ、斬新さ"だが、これが転じて目先の変わった商品という意味になったそうである。

代表的なノベルテイとしては、ティッシュ・ペーパーや下敷き、ボールペン、メモ帳などの文具類がある。また、プレミアムとは商品の購入者に贈られる景品のことを表す。このプレミアムにはテレフォン・カード、映画や旅行のチケットなどが多く使われるが、ノベルティを景品とすることもあり、その場合はプレミアムの中に含まれるわけだ。

アーティストとレコード会社との間で締結されている専属実演家契約とは
まず、アーティストとレコード会社との間で締結されている専属実演家契約の内容について、ここでおさらいしてみたい。

専属実演家契約とは、2~ 3年間の契約期間中において、アーティストがレコード会社の専属実演家として、そのレコード会社のためだけに実演(歌唱や演奏)をし、その実演の対価としてレコード会社からアーティスト印税(歌唱印税、実演家印税ともいう)を受け取るというものだ。

もちろん、テレビやラジオ、コンサートなどの実演についてはこの契約の対象ではないので、拘束されることはない。あくまでも市販される録音物や録画物のための実演を対象としている。 例えばナビ君がマングローブレコードに所属しているとしたら、マングローブレコードとの契約期間中はソニーミュージックや東芝EMI、ビクターエンタテインメントなど、他社から発売されるレコードに無断で実演を収録してはいけないのである。

よくアルバムのクレジットに「bycourtesy of OOOO(レコード会社名)」とあるが、これは他社の専属アーティストに自社のアーティストのレコーディングで実演してもらったことを示す御礼の意思表示である。ちなみに「by courtesy of~ 」とは「~の好意により」という意味だ。 さて専属実演家契約には、契約期間中に実演したものに関して、実演家が保有している実演に関する録音権や録画権がレコード会社に帰属する旨の条文が以下のように規定されている。

専属実演家契約(実演に関する権利の帰属)
これはつまり、実演家のすべての権利(具体的には録音権、録画権、送信可能化権、貸与権、貸与報酬請求権、二次使用料請求権、私的録音録画補償金請求権)がレコード会社にあるということだ。

したがってレコード会社は、実演家の実演が収録された原盤を自由に複製、頒布して売ることができるのである。ナビ君の例で言えば、彼のデビュー曲「ったくおまえって奴は……」や大ヒット・シングル「いかすぜ、あの野郎」などの原盤に収録されたナビ君の実演に関する権利は、すべて所属のレコード会社に譲渡されているのである。

それ故、所属のレコード会社は、ナビ君の実演が収録されたレコードを自由に複製、頒布してレコード・ビジネスを展開することができる。そしてナビ君は権利譲渡の対価として、アーティスト印税をもらうことになっている。

このように専属実演家契約は、契約期間中に収録された録音物、録画物に関して、地域、期間、範囲に制限なくレコード会社の自由になっていることが多い。ただしまれではあるが、中には原盤の再利用(コンピレーション盤やベスト盤など)について、事前許諾などの制限条項を盛り込むアーティストも存在する。

このような場合、レコード会社は原盤の再利用の際には必ずアーティストの許諾を求めることになる。 アーティストが出演したCMの使用範囲をどこまで限定するかは、広告代理店とプロダクションとの話し合いで決められる。

広告代理店としては、なるべく使用範囲を広くしたいだろうし、プロダクションとしてはアーティストのイメージや露出に関する問題だから、納得する範囲に留めておきたい。特にインターネットのホームページなど、新しい広告媒体については慎重に対処する必要があるだろう。