原盤制作者が持つ原盤権とは
音楽CD売り上げ枚数の違いまず、レコードを製作するためにはマスター・テープ(原盤)が必要である。

そしてその原盤を作るためにはスタジオを借りたり、スタジオ・ミュージシャンやエンジエアなどの協力を得なければならない。

これらの費用を負担し、原盤を制作した者のことを原盤制作者と呼び、原盤制作者は原盤権なるものを持つことができる。

原盤制作者を著作権法ではレコード製作者といい、彼らには複製権や送信可能化権、貸与権、二次使用料請求権、貸与報酬請求権、私的録音録画補償金請求権(これらの権利を総称して原盤権と音楽業界では呼んでいる)などが与えられている。

さて、プロダクションは原盤を自分のところで制作する場合、プロダクションは、「音を最初に固定した時」(著作権法101条第2号)から原盤権を保有することができる。この原盤権には複製権が含まれているので、レコード会社は実演が収録された原盤からレコードを作りたくても、複製権の許諾がなければできない。

したがって、レコード会社がレコードをリリースするためには、原盤権の保有者であるプロダクションから原盤権を譲り受けるか、あるいは原盤の使用許諾をもらわなければならないのである。

原盤の権利者から原盤権を譲り受ける契約のことを原盤譲渡契約といい、原盤の使用許諾をもらう契約のことを原盤供給契約という。また、原盤譲渡契約に基づいて制作された原盤のことを譲渡原盤、原盤供給契約に基づいて制作された原盤のことを供給原盤という。そしてこの2つは、天国と地獄ほどの差があるのだ。

原盤譲渡契約と原盤供給契約の違い原盤譲渡契約とは、まさに原盤を相手に譲り渡してしまう約束なので、基本的に原盤権は制作者には戻ってこない。権利を相手にあげてしまう契約なのである。

もちろん、権利譲渡の対価として原盤印税(小売価格の10~ 15%)なるものが相手方(通常はレコード会社)から支払われることになる。

これに対して原盤供給契約とは、原盤の使用許諾であるので、原盤権はあくまでも原盤制作者が保有する。レコード会社は権利者からあくまでも、原盤の使用を認めてもらっているに過ぎないのである。

したがって、契約期間が過ぎたらレコード会社はもうそのレコードを作ったり、売ったりしてはいけない。そして、原盤制作者に速やかにマスター・テープを返却しなければならないのである。

日本と海外における音楽CDの売上枚数算出方法の違い
次に売上枚数についてお話ししよう。日本では純売上枚数を使宜的に工場出荷枚数や営業所出荷枚数の80%としているところがほとんどである。

これはもう確固とした業界慣習で、「100万枚売れても返品が20万枚もあるとするこの慣習はおかしい」、「小売店がレコード会社に返品できるのは、前月の仕入額の10%~ 15%までじゃないか」と叫んでみても、なかなか相手にされない世界なのである。

では、外国はどうか。これまた日本とやり方が違うのだ。外国では実際に販売された枚数の90%を純売上枚数(net sales)にしているところが多い。これは昔、レコードがシェラックでできていた時代に、出荷、運送の途中でレコードが壊れることが多かったことから、レコード会社が流通業者に対して商品の90%分の代金を請求していた商慣習に由来している。

しかし、現在ではいくら荒っぽい運送をしたとしても10%も破損品が生じるとは到底考えられず、レコード会社にとってかなり都合のよい解釈をされている条項であると言えよう。まあ、日本でも外国でも印税の計算式を考え出す人々は抜け目がないのである。

このように計算対象枚数については、日本では出荷枚数の80%を基準にし、外国では販売枚数の90%を基準にするのが一般的である。郷に入れば、郷に従えである。印税の計算方法がここまで違うと、「日本式で計算しろ」とはなかなか言えない。

それよりも、果たして日本円で印税単価がいくらになるのか、また予想された枚数が売れた場合、どのくらいの印税収入があるのかを自分で計算してみよう。

ビジネスを行なうには試算をすることがなによりも大事である。外国では前渡金(advance)の習慣があるので、試算額が前渡金の算定にも大いに役立つことだろう。