楽器の生い立ち
人類が最初に楽器を作ろうとした動機は、自然の音の模倣(コピー〉だったのかもしれません。

赤ん坊がことばを覚えるために周りの音をすべて模倣しようとするのと同様に、古代の人間たちが、波の音を、風の音を、鳥たちの声を、その意味を探るために、あらゆる道具を使ってそれらを模倣しようとしたことは想像に難くはありません。

倍音の原理はわからないものの、彼らは、自然界に閬こえてくるさまざまな音の「複雑さ」に何らかの「意味」を見出していたのではないでしょうか?

だからこそ、その「音」を作りだそうと、楽器を作り始めたのではなかったのか?

彼らが楽器を作り始めた状況を想像してみよう。
モノを叩く、こする、ひっかく、吹いてみる。どんなことをしても音は出る。それはなぜなのでしょうか?

それは、空気が振動しているからです。
それでは、空気を振動させるものは何なのか?

それは、音を出す物体が空気中の圧力を変化させているからです。
これだけではわかりにくいと思いますので、もう少しわかりやすく説明します。

その仕組みは、太鼓を叩くことを想像すれば比較的わかりやすいかもしれません。
手でもバチでもいいから、太鼓の皮を叩いてみます。叩かれた皮は、叩かれた瞬間に内側に押される。皮が内側に押されると空気が皮の内側にへこみ、そこに空気の「空間」ができる。

つまり空気の隙間なのです。そして、次の瞬間、今度はへこまされた皮が押された反動で空気を外側に押し出そうとします。

そして、押し出された太鼓の皮が周りの空気を押して、空気の密度を濃くしていくつまり、太鼓が叩かれる前の空気を太鼓の皮が押すので、そこだけ空気の密度が押された分だけ濃くなってしまうという原理なのです。

こうやって、叩かれた太鼓の皮は同じような振動を繰り返し、空気の「薄い」部分と「濃い」部分を交互に作っていきます。これが、空気の波(振動)の正体であり、つまりは、「音」の正体ということになるのです。


人類最古の楽器が何だったのかということに興味がありませんか?
これを調べていくと、人類が最初に発明した楽器は人間の身体だったのではないかという説に行き着きます。

何しろ音を出すモノと言えば、自分の身体が一番手っ取り早いのです。手を叩くだけで十分リズムは出せます!これだけで音の強弱は十分可能です。

これだけでもう立派な楽器なのです。実際フラメンコなどはわかりやすい例でしょう。ハンドクラップ(まさに手拍子だ)として、ラテン音楽、民族音楽、ヒップホップ音楽などを中心に世界中の音楽の中で日常的に使われています。そして、人間の身体の中で手の次に使えるのは骨です。

ご存じの通り人間の身体はたくさんの堅い骨から出来ています。この堅い物質が最古の楽器として音楽に利用されたことは想像に難くないでしょう。自分の手で胸を叩きなから(あばら骨の間の空間が振動の共鳴体になる)、足を踏みならしながら、リズムを作り歌を歌う。

おそらく、こうしたことが人類にとっての音楽の発生の起源なのでしょう。しかし、ここで問題にしているのはそうした考古学的な興味ではなく、人間の身体やその他の道具を使って作り出した音や音楽がどうやって、現在のような楽器に発展してきたかということ。

単純なハンドクラップから現在のシンセサイザーやサンプラーなどの電子楽器に発展していく過程に一体何があったのかを解明するには、まず倍音の構造を理解しておいたほうがよいかもしれません。

そもそも倍音の原理なしに楽器というものは作れませんが…。

しかし、何でも科学的に原理や構造が解析できる現代人と違って、何万年も前の私たちの祖先が倍音の原理などを科学的に理解していたとは思えません。ただ、本能的にはわかっていたのでしょう。そうでなければ、楽器などを発明できるわけがないのです。ここが、一番肝心なポイントとなります。

倍音という音響的なメカニズムを科学として理解することはできなくても、人間の耳はそれをごく「自然なこと」として理解することはできる。だから、人間は楽器を作り出し、そして、音楽を発明しました。

倍音とは、実際に耳で判断できる「ある高さ(ピッチ)」の音と一緒に、ある規則を持って嗚っている音の集団(固まり)のことです。そして、この音の固まりは、人間の耳に聞こえてくる場合もあれば、聞こえない時もあるのです。