カラオケはいつ、どこで、誰と、どんな曲で初体験するのか?

初めてのカラオケ、その効用は?皆さんが初めてカラオケに触れたのはいつ、どのような形だったか覚えているだろうか?

カラオケそのものの歴史が書かれているが、あなたがいつ生まれたかによって、当然カラオケとの距離感が違ってくるはずである。

しかも、カラオケは登場以後も劇的に変化を続けている。「カラオケ」という言葉への印象は、実際にあなたがそこへ飛び込んだタイミングに大きく左右されている。

まず、カラオケ以前に大人になった世代は、人前で唄うことに対して特別な感覚をもっている。唄う原体験は、学校でみんなで唄った唱歌や、1人で口ずさむ流行歌だ。人が集まった中で歌を披露するのは、「本当に上手い人」だけに許された特権だった。宴席で唄うことを求められたりするのも、基本的には子供の頃から歌が上手いと褒められて育った人たちだ。

つまり、この頃の唄う現場とは、純粋にエンターテイナーがいて、聴衆がいるという構造たった。舞台上の大と、客席との間には、明らかな線引きがあった。

だからこそ、この年代は唄うことに対して、晴れ舞台という意識が高く、また人の歌に対して敬意を表し、ちゃんと聴こうとする意識をもっている。そして、歌の上手い下手に対して敏感だ。

また、伴奏がゴージャスだと嬉しい。だからカラオケに、自分の歌を「カラ」ではあっても、オーケストラが支えてくれていると感じるのだ。

さて一方、カラオケ登場後に生まれた年代、カラオケがそこにあるのが当たり前、という形で歌に触れているとどうなるか。唄う原体験はもちろん学校や幼稚園などでの合唱もあるが、それ以前に家族でカラオケボックスへ行ったり、家庭用カラオケで披露している場合も多い。

そしてそこでは上手い下手はあまり重要ではなく、その場の雰囲気を楽しむことが重要となってくる。つまり、手軽なコミュニケーション手段だ。歌の選択肢はカラオケの進化によって激増した。

画面に文字が出れば、たいして覚えていなくても唄うことができる。どんな歌を選び、唄うのか。それがお互いのパーソナリティーを知るきっかけになり、親睦を深めるためのツールとなる。

人前で唄うことは特別なことではなくなった。また、いつでもどこでも音楽が手に入る時代においては、伴奏は機械で十分であり、特別感は薄れる。

また、カラオケは今や子供向けのおもちゃとしても浸透している。テレビに登場する歌手を真似ることや、大好きなテレビアニメの主題歌を、キャラクターが付いたマイクで唄ってその世界に同化することは、子供たちにとって楽しい遊びだ。

もちろん、カラオケ登場以前の子供たちも唄って遊んでいたはずだが、伴奏付きで唄うことはやはり特別の場でしかあり得なかった。しかし今の子供にとって「オケ」は特別なものではなく、ありふれたものなのだ。



誰があなたにカラオケを伝えたか
現在、1人でカラオケをしよう、と考える人が増えている。それだけカラオケが気軽な娯楽になったということでもある。しかし、最初は誰かの紹介でカラオケに行ったはずだ。

月刊『歌の手帖』の読者は、カラオケが流行り始めてからすぐに夢中になった、現在は60~70歳ぐらいになる、つまり当時40~50代の方々が中心だ。もともと、カラオケは大人の娯楽だった。しかも、今のようにボックスもなければ、利用価格も低くない時代である。

接待や仕事帰りに酒場に行き、初めてカラオケに出合う人が多かった。当時の流行の最先端に飛びついた大人たちである。他の流行と同様に、最先端の人たちによってカラオケの存在はひろめられていった。スナックなどでカラオケがひろまったというのはわかりやすい話で、唄うのには聴いてくれる人が必要だからだ。一緒にお酒を飮んでくれる女性がそこにいて、自分のことをまるで歌手にでもなったように、もち上げてくれる。人前で唄うのは特別な世代である。誰かに認及期をつくり上げている。

同じ年代やもう少し上の世代で、普及後にカラオケを始めた人たちはどうかというと、一緒に楽しむ仲間がいて初めて、その楽しみを続けていくことができると語っている人が多い。もともとそんなに上手ではなかったけれど、練習すれば上手くなれる、というカラオケコミュニティーだ。上手くなければ人前で唄うことは恥ずかしい。

でも、友達と一緒にだったら練習することも苦にならないし、練習して成長し、それをお互いに披露することも楽しい時間になり得る。そして、歌を楽しむこと自体が、お互いの気持ちを理解したり、励ましたりといった、生きるうえで重要な役割を果たしていることが多いのだ。

カラオケが遊びから習い事へ、生涯学習へとその意義を変えていっているのは、複雑な問題を抱える大人にとって、唄うことで自分の気持ちを解放したり、現実の生活を束の間忘れたりする大事な気分転換の時間となっているからである。そして、カラオケをするには少し勇気がいる、という人たちにとって、その時間を共有する仲間がいることはとても重要なことなのだ。
カラオケの黎明期から趣味として長く続けている人たちは、ある程度カラオケが得意な人たち、コミュニケーションが上手な人たちだといえよう。