フルート
音域
高音域は、かなりの高さに到達している。ピッコロに持ち替えれば、さらに高い。しかし、いかんせん低音は、わずかに、たったの半音しか標準のCを下回っていない。完全な高音楽器である。

強弱
高音域での、ピーッー というフォルテはよく通るので5をあげたいところだが、中低音ではオケのなかでも最も音量がない。ピアニシモは、ラヴエルの「ボレロ」で最初にメロディを吹くのがフルート、というくらいで得意なはずだが、今度は高音域での安定したピアニシモが不得意。

メロディ/伴奏
圧倒的にメロディの楽器であろう。伴奏などしているのは、となりに長いこと住んでいるが、さっぱり聞いたことがない。それでも、「その他大勢」はしかたなくやっているらしい。


オーボエ
音域
とにかく、狭いことがまず印象的である。上はクラリネットとおなじくらいなのに、低音はわずかにフルートより半音しか広くない。

強弱
フオルテはまあまあ聞き取れる標準的な数値であるが、ピアニシモは非常に不得意で、管楽器のなかでは最低である。これは、音が出たときの効果うんぬんより、失敗する率の高さがわざわいしている。

メロディ/伴奏
やはり、メロディに大幅に偏った楽器である。自分で演奏していても、伴奏のようなことは、フルートよりさらに少ない回数しかおこなっていないのではないかと思われる。持ち替えのイングリッシュホルンにいたっては、もはやソロか、オーボエ群での低音の補強しかないというとんでもない楽器である。

クラリネット
音域
高音はオーボエとほぼおなじだが、低音が広いことを知らなかった読者も多いと思う。このため、木管ばかりのアンサンブルでは、ホルンとともに中音域を担当することも多く、楽器機能の多様性、万能性をかたちづくる原因となっている。

強弱
印象的なのは、オーケストラのなかで最も得意とするピアニシモである。「まったく聞こえない音」を出すことができる唯一の楽器が、このクラリネットなのだ。フォルティシモも、音域によっては強力だが、かならずしもつねに聞こえるというほどではない。

メロディ/伴奏
どちらも、ひとしく得意であり、オーボエやフルートと同等のメロディ表現力がありながら、この楽器がしぶしぶ伴奏に回るケースが多い原因もその器用さにある。つまり、クラリネットに魅力が少ないからではなく、ほかの楽器があまりにも伴奏が不得意なために回ってくる役割なわけです。

ファゴット
音域
やはり、低音の伸びは著しい。チェロに長三度(全音)まさっていることを知っている人は、少ないだろう。上もかなり出るのだが、やはり低音楽器であることは隠せない。

強弱
音の弱い楽器である。目いっぱい吹いたとしても、まわりがほど届く音にはならない。ピアニシモもさほど得意ではなく、オーボエよりはまし、というていど。

メロディ/伴奏
おれのすぐうしろに座っているのだが、なにをやっているのか、よくわからない。メロディなどはあまりこないようだ。ときおリソロがあって、それはとてもステキであるが、やはり内声、低音のほうのお仕事が多いらしい。

サクソフォン
音域 非常に広いのだが、これはじつは、ソプラニーノ・サクソフォンからバス・サクソフオンまでの一族すべてを動員した結果である(コントラバス・サクソフォンというバケモノも存在するが、アナタ聞いたことありますか?)。もっとも一般的なアルト・サクソフォンだけで見るならば、音域はほぼクラリネットに準じている。
強弱 フォルテはなかなかかん高く、よく聞き取れるが、美しい範囲となると知れている。ピアニシモのほうは、さすがクラリネットの末裔だけあって、音域によってはかなり可能だが、円錐管になっているぶん(クラリネットは円筒)、低音ではけっこう苦労するらしく、まあ、ファゴットていどだろう。
メロディ/伴奏 この数値はあくまでも、交響楽団(オケ)のなかにおけるものである。オケにおいてサクソフオンは、まさに片手で数えられるほどしか参加曲目がなく、そのいずれもが当然ソロ、メロディを演奏するという仕事である。

ホルン
音域
張りのある、「高音域」でのソロが非常に印象的な楽器だが、おなじ音はフルートにおいてはまだ中音域、というわけで、上への伸びは実際にはさほどではない。むしろ知られていないのは、二番、四番のホルンは、ときとして非常に低い音域まで潜って仕事をしている、ということであろう。

強弱
フォルテは、ふだんの穏便な印象からは意外なほど出る。ことに四人がいっせいに吹き鳴らすユニゾンは、個人的にはオケのクライマックスにおける、最大の切札だと思う。ピアニシモも、ほかの金管楽器よりは管が細いため相当に達者であって、音域によってはクラリネットに近いものがある。

メロディ/音域
メロディを演奏しているときの印象が非常に強いのだが、実際にはその役割はあんまりおこなっていない。曲によっては、「パート譜を最後まで見ても、どんなフシだったか思いだせない」こともある。反対に、伴奏や内声の機能は、オケのなかでも最大である。ノバシ、キザミ、アトウチの「伴奏三大労働」のどれもが、ホルンの得意技である。

トランペット
音域
上は本管なみで、非常に輝かしい。下もけっこう広がっているが、実用にならない音色ならば、もっと下の音も「出せる」らしい。

強弱
なんといっても圧巻なのは、クライマックスのフォルティシモ、とくにチャイコフスキーなどの交響曲。ピアニシモには苦しむ楽器であり、ことに二番トランペツトには鬼門が多い。オーボエほど失敗しないかもしれないが、目立つ音だけに怖さはオーボエに近いものがあるだろう。

メロディ/伴奏
メロディばかりやっているのかと思いきや、モーツァルト、ベートーヴェンの時代ぐらいまでは、ほとんど、ぱ、ば、んぱぱぱっぱっ、ぱあ、などと、テインパニと大差ないことをやっていた。伴奏のポイントが高いのもそのため。ホルンより、メロディがさらに少ない。


トロンポーン
音域
はっきりと、低音楽器である。上はファゴットに少し負けるくらい。下は、実際に使われるのは、やはリファゴットとおなじぐらいだろう。

強弱
トロンボーンなりの、必死のピアニシモというのも、なかなかに緊張感があって美しいが、いかんせん楽器そのものが大きいため、本当のかそけきピアニシモというものにはやや遠い。その一方、フォルティシモは物凄いことになっていて、本気で吹かれたら一〇〇人のオケなど、ひとたまりもないだろう。ただその場合、息をいっぱい使うので、トランペツトほど長く伸ばせないのが救いですが。

メロディ/伴奏
メロディを吹く、ということは非常に限られている。それでも、まったくないわけではない。伴奏というのもあまり得意ではなく、あえて言えばコラール、ファンファーレがさまざまな音量で出現する結果、それがメロディに聞こえたり、伴奏に聞こえたりする、というわけである

テューバ
音域
当然、低音楽器であり、非常に低い音にまで到達できる深海探査艇のおもむきがある。ただ、そのへんの深さにはもはや光は射し込まず、静かにマリン・スノーが降り積もるだけであるので、ただ「低い」ということには、あまり大きな音楽的意義はない(「高い」ということには、なぜか、それがある)。

強弱
フォルテは美しく圧倒的だが、管がくるくると巻いているので、音が柔らかく、インパクトは若干だがトロンボーンに劣る。しかし、オケそのものを包み込むように、どこからともなく、まさに地の底から湧き上がるように響くテューバのフォルテには、かえがたい効果がある。ピアニシモは、苦しいものがある。まあ、出るのだが、そもそもピアニシモが欲しいならテューバには音を書かないのが、むしろ常識というものであって、あんまり、そこらへんは期待されていないみたいだ。トロンボーンと組むコラール、「新世界」の第二楽章の冒頭なんかは、まあ、ピアニシモの美しい用法と言えるが、支えとしてシッカリ吹かねばならないので、消え入るようなピアノ(弱音)は、ほぼ不要と言える。

メロディ/伴奏
少しおおげさに言えば、「ええ、この前メロディを吹いたのは『幻想』のときだったから去年のいまごろで、こんど吹くのは『フインランデイア』で、十一月かな」ってくらい、メロディは少ないのだが、良い作曲家の書くバスというものは、良いメロディになっていることが多いので、ほかの金管にくらべて楽譜はけっこうメロディックである。

打楽器
音域
非常に広いので驚かれると思うのだが、オーケストラでもっとも高い音を出す楽器は、ピッコロでもヴァイオリンでもなく「シンバル」だ、という事実があり、また大太鼓というものは、なにしろ物凄く低い音なのである。ああ、ちなみにこのグラフは、ティンパニ以外の一般的打楽器を総合して取り扱っている。

強弱
フォルテが強いのは当然だが、ピアノは楽器によって非常に苦しい。たとえば単純な話、小太鼓だが、本のバチでタイコを打つ以上、どんなに小さいったって、まあ、限界がある。 一発ならまだしも、連打となると、音量よリリズムに狂いが出やすいわけです。

メロディ/伴奏
メロディは、基本的に、ない。まれに本琴、鉄琴などにチロリン、
カリカリと出現するが、それとて本当の意味で「メロディ」と呼べるだろうか。それ以外の伴奏などだが、まあ、ポルカやマーチなんかで、タイコ隊がいっせいにやっているのは、やっぱりあれは、伴奏なんだろうねえ。おれには、「主役」に聞こえるのだが。

ティンバニ
音域
高いほうは、かなリムリしてこのへんだ。基本的にはドとソでやっているわけで、そう広い必要はないと思う。

強弱
本当のクライマックスで、でん。どん。でん。どんとやっているのは、非常にカッコイイ。ピアニシモも意外と重要で、モーツァルトのオペラでの一発、ブルックナーやドヴォルザークでのトレモロなど、神秘的ですねえ。

メロディ/伴奏
オケの音楽をメロディ、伴奏、テインパニと分類したくなるほど、ティンパニの機能は重要で、かつ独立したものなのだが、やはり、どっちかといえば伴奏なのでしょうか。


第一ヴァイオリン
音域
高音は、最高まで届いている。フラジョンツト(倍音)を使って、も音波スレスレという音域まで、到達することが可能(P)なほど、ヴァイオリ音は無限に近い。低音はG線の開放弦までであり、はっきりと限界がある。

強弱
ここでは一応、個人ではなくチームプレーとして観察している。金管や打楽器がレベル5で鳴りまくっているクライマックスでも、かすかにというかハッキリというか、聞き取れるのは、ピッコロと第一ヴァイオリンであるので、やはり数が多いというのは強いことだ。また、ピアニシモも、ほぼ無限に出る。

メロディ/伴奏
どっちも、非常に得意であるが、伴奏は管楽器やチェロがソロをするときに限定されてくるので、やや一般性が薄れるかしら、というくらい。メロディは、たいていいつでも弾いてますね

第ニヴァイオリン
音域
おなじ楽器なので、本当は第一ヴァイオリンとおなじ音まで出るのだが、最高音域では、第二は第一のオクターブ下を弾いていることが多いので、少しポイントを下げた。

強弱
ピアニシモはおなじだが、フォルティシモは人数の少ないぶん第一に負けている

メロディ/伴奏
これはもしかしたら、本当にコンピューターでデータ解析をしたかつたくらい、数字に表すのがむずかしかった。たとえば、第一の美しいメロディのオクターブ下や、三度下で補強しているのは、メロディなのか伴奏なのか、ということ一つにしても、むずかしい問題なのだ。この数字は、迷った末の直感。

ヴィオラ
音域
低音は、ヴァイオリンより完全五度下がるだけだが、すごい高音はあまリオケでは用いない。出ることは、いくらでも出るらしいが、音程をそろえて弾かねばならないオケでは、その音域はちょっときびしいのだ。

強弱
楽器が大きいのでよく鳴るのだが、反面、弦の張力は落ちるので、音の張りは減る。弓への反応もややにぶるので、ピアニシモの範囲も少しだけ、狭まる。

メロディ/伴奏
メロディを演奏することは、モーツァルトなんかでもけっこう多いのだが、断片的なことが多い。外にむいて、ヴィオラだけがしっかりとメロディを弾く、というのはじつはたいへん珍しいのだ。伴奏は、いっつもやってます。ホルンとおなじ。

チェロ
音域
上はたいへん高い音まで出るのだが、実際の場面では、やはリヴィオラとおなじ理由で、要求されない。低音はヴィオラの一オクターブ下。

強弱
弦の張りがこれまた強いので、フォルテも音域によっては相当出る。ピアニシモのほうは、ブルックナーやマーラーのチェロ。パートを聞いていると、ときおり苦しそうなことがあるので、少し減点した。

メロディ/伴奏
メロディ、けっこう多いです。とはいえ、基本的には低音の楽器なので、コントラバスとおなじパートを弾いていることが多い。伴奏というより、バスの楽器で、声部としての独立性はむしろヴィオラより高い

コントラバス
音域
ソロの曲ではムリして楽器ごしに腕をつっ込み、指を届かせて高い音を弾く 姿が印象的だが、オケで求められる音域は比較的狭い。最低音は第五弦を加えても、コントラ・ファゴットに負けるくらいだから、まあ、音楽の音域って、そのくらいなのだろう。

強弱
これまた、それほど広い範囲には及ばない。まずフォルテは、どう頑張ってもさほど出ない。うまいコントラバス奏者の大事な条件のひとつとして、「戦力になる音量を出せる」というのがあるそうだ。

メロディ/伴奏
裏方に徹している、という意味では、伴奏のポイントをあげたくなってしまう。メロディは、まあ、ティンパニよりは多いでしょう、というていど。

ハーブ
音域
上から下まで均等に、広いです。

強弱
ホールに早く着いた日など、だれもいないステージにあるハープをそっと弾いてみて、意外に大きい音がするのにあわてた経験のある人は多いだろう。とはいえ、クライマックスでは、二台に補強されることが多い。音量自体はさほど強力なものではないのだ。指で弦をはじくのだから、物凄いピアニシモ、というのも出にくい。

メロディ/伴奏
ハープの仕事というのは、ほとんど「飾り」のようなものであって、メロディを外、伴奏を内とすれば、まあ「外の外側」のような、「包装」などに当たる。どちらとも言えないが、どちらでもある、という感じかな。