音楽科の教育内容が8つの視点で改善され学習指導していく
音楽科の内容の改善
各学年の内容については、子供一人一人が自らの感性を豊かに働かせながら様々な音楽に積極的にかかわり、楽しい音楽経験を得ることができるようにすることを重視し、以下のような内容の改善を図った。

①内容の構成について
全体の内容領域については、音楽科で育成すべき基礎・基本の内容を重視し、弾力的かつ創意に満ちた指導が展開できるようにする趣旨から、現行と同様に「A表現」と「B鑑賞」の2領域によって構成されている。

これは、子ども一人一人が個性的で創造的な学習活動を一層活発に行うことにより、音楽活動の喜びを得るとともに、生涯にわたって音楽に親しむ上で必要となる基礎的な能力の素地を養うことを一層重視しているからである。

したがって、領域相互の関連はもとより、各領域内の内容についても必要に応じて相互の関連を十分に図ることによって、総合的な深まりと広がりのある音楽活動がより活発に行われるよう配慮する必要がある。このことについては、新学習指導要領の「第3指導計画の作成と各学年にわたる内容の取扱い」において次のように述べている。

「第2の各学年の内容の「A表現」と「B鑑賞」との指導の関連を図るようにするとともに、それぞれに示す各事項の指導についても、相互に関連をもたせるようにすること。」

そして次に、各領域の内容の構成をみてみると、それぞれの領域において、身に付ける能力と取り扱う教材とに内容を括り、各学年を通じてほぼ同様の指導項目を設定している。そしてそれぞれの項目の中に、子どもの発達段階に即した具体的な指導事項を、連続性、発展性を踏まえた上で、低・中・高学年ごとに示している。各学年に共通する指導項目及び指導事項は次のとおりである。

[A表現]
(1)音楽を聴いたり楽譜を見たりして演奏できるようにする
(2)曲想や音楽を特徴付けている要素を感じ取って、工夫して表現できるようにする。
(3)歌い方や楽器の演奏の仕方を身に付けるようにする。
(4)音楽をつくって表現できるようにする。
(5)表現教材は次に示すものを取り扱う。

[B鑑賞]
(1)音楽を聴いてそのよさや美しさを感じ取るようにする。
(2)鑑賞教材は次に示すものを取り扱う。

このような内容の示し方をしているのは、「答申」が「小学校音楽科の改善の具体的事項」の中で「学校や子供の実態等に応じて弾力的な指導が行われるようにするため、目標と内容を2学年まとめて示す」と述べている趣旨を最大限に尊重するよう留意しているからである。このような趣旨は、指導計画に十分反映させて、実践的な指導の場に生きて機能するように心がけることが大切である。

②内容改善の要点について
各学年の内容については、これまでの学習経験を考慮し、以下の視点に基づいて改善が図られている。


(ア)内容を厳選する
学校や子供の実態等に応じて弾力的な指導が行われるよう、学年の目標とともに内容を2学年まとめて示している。このことにより、子供たちがゆとりをもって楽しい音楽活動を進めることができるようにしたのである。

また、音符、休符、記号などについては、各学年の内容に学年別に示すことをやめ、全学年を通じて弾力的な取扱いができるよう、指導すべき種類を現行の39種類から30種類に厳選している。さらに、小学校において理解が困難になりがちであったへ長調と二短調の視唱や視奏の内容を削除し、ハ長調とイ短調の視唱や視奏の内容のみを示している。

(イ)表現活動で取り扱う楽器の選択幅を広げる
小学校音楽科においては、子供たちが様々な楽器に直接触れ、そのよさや楽器演奏の楽しさ、様々な音の響きを体験的に学んでいく必要がある。これまでの技能訓練に陥りがちであった器楽の学習をより楽しい音楽活動にしていくためには、表現領域における器楽の学習で取り扱う楽器の選択幅を広げ、子供の興味や関心、学習の状況等を十分考慮しつつ、各指導事項の内容をじっくりと身に付けていくような学習を進めていく必要がある。そこで、今回の改訂では、具体的な楽器名を各学年の内容には示さない。

(ウ)創造的な学習活動を充実する
表現領域においては、各学年の発達段階に即して、子供が自分の思いを生かした表現活動を一層活発に行うようにする必要がある。そのため、例えばふし遊びやリズム遊び、様々な音を活用した音楽づくり、簡単な旋律やリズムをつくって自分なりに表現する活動など、音楽をつくって表現する活動に関する事項をより具体的に示している。

(エ)鑑賞活動を充実する
鑑賞領域においては、子供が進んで音楽を聴き、音楽のよさや美しさを感じ取り、様々な音楽に親しむ活動が一層充実するよう、指導事項の精選を図っている。実際の指導においては、単なる楽曲分析的な学習に終わらず、楽曲全体の曲想や音楽の流れを感じ取って聴く活動を大事にして学習を進める必要があろう。

(オ)共通教材を見直す
歌唱共通教材については、日本のよき音楽文化を世代を超えて歌い継ぐようにするため、現行と同じ楽曲を示し、低学年及び中学年では現行と同様に、各学年4曲の中から3曲を扱うこととし、高学年では4曲の中から2曲を扱うこととしている。また歌唱教材については、共通教材の外、長い間親しまれてきた唱歌、わらべうたや民謡など日本のうたを取り上げるようにすることを示している。

鑑賞共通教材については、各学校が創意工夫ある指導を進め、多様な作品の中から子供の実態等に応じた教材を選択して学習を進め、様々な音楽に親しむことができるようにするため、 これを示さないこととしている。

ただし、 子供が我が国及び諸外国の音楽に一層関心を深め親しむことができるような適切な教材が取り上げられるよう、教材選択の観点を具体的に示している。(エ)でも述べたように、これからの音楽の学習においては、子供たちが様々な音楽により親しむことができるような活動が大切であり、今回の改訂で改善された教材選択の観点を十分に検討し、教材研究を進めることが急務となろう。

(カ)表現及び鑑賞の教材の示し方を見直す
歌唱、器楽、鑑賞の教材について、学校や子供の実態等に応じた弾力的な指導が行われるようにするため、年間に取り扱う曲数を示さないこととしている。

(キ)表現形態を選択できるようにする
表現教材の選択の観点において、二部合唱や三部合唱などの表現形態を細かく示すことをやめるとともに、高学年において、学校や子供の実態等に応じて合唱や合奏、重唱や重奏などの表現形態を選んで学習できるようにすることを指導計画作成上の配慮事項として示している。これは、単に歌唱だけ、あるいは器楽だけ行えばよいということではなく、子供たちの主体的な学習活動をより充実しようとするものであり、表現及び鑑賞のバランスの取れた学習の中で工夫して行われる必要がある。

(ク)国歌「君が代」の指導を充実する
国歌「君が代」の指導の充実を一層図るため、「いずれの学年においても指導すること」と明確に示している。これは、子供たちが将来、国際社会において尊敬され、信頼される日本人として成長していく必要があり、そのためにも、国歌を尊重する態度を養うようにすることが大切であるとする、教育課程審議会の答申の趣旨を十分に反映しようとしたものである。


疑問質問コーナー
Q.低学年で扱う楽器については、「身近な楽器」と示されていますが、どんな楽器を扱ってもよいのでしょうか。

A.いずれの学年においても、楽器を選択する際には、何のためにその楽器を扱うのか、というねらいを明確にしておくことが大切である。「身近な楽器」とは、その言葉のとおり、子供たちの身近にあって、比較的手軽に器楽表現を楽しむことのできる楽器のことを指している。

特に低学年の子供は、楽器を演奏することに強く興味を示し、様々な楽器に積極的に触れて、自分でいろいろな音を出してみようとする。そのような子供の興味・関心を生かして、楽器との自然な触れ合いを大切にしつつ学習に取り組んでいくことができるような楽器の選択をすることが大切である。
中学年・高学年との関連を考慮に入れ、旋律楽器と打楽器とに分けて具体的な楽器の例を以下に示す。

旋律楽器…音に対する感覚面の育成に適しているハーモニカや、旋律だけでなく音の重なりも表現できる各種オルガンや鍵盤ハーモニカなどが、その代表的なものと言える。また、これまで3年生から扱うこととなっていたリコーダーや、素朴な味わいのあるオカリナなども、自らの身体と楽器とが一体となって演奏できる身近な楽器として、子供の実態に即した形で活用することが考えられる。

打楽器…扱いやすい小型の打楽器(すず、カスタネット、タンブリン、トライアングル等)や各種の太鼓(小太鼓、大太鼓等)などが、低学年の学年目標であるリズムに重点を置いた活動に取り組んでいく上で大変効果的である。さらに、我が国で古くから使われている打楽器なども、活用することができる。
いずれにしても、身体の発達等も含め、子供たちの実態を十分考盧に入れて、取り扱うようにする必要がある。


Q.日本で古くから歌われて親しまれている唱歌や童謡日本の歌などがたくさんありますが、各学校で取り入れてもよいのですか。

A.結論から先に言えば、「取り入れてもよい」のではなく、「積極的に取り入れるべき」といった方がよいであろう。これは、「指導計画の作成と各学年にわたる内容の取扱い」の項で、「日本のうたを取り上げるようにすること」と示されていることからも明らかである。

学校という場所は、人類がこれまで蓄積してきた文化を後世に継承していくという仕事も、その大きな使命の一つになっている。今回、小・中学校の鑑賞共通教材及び中学校の歌唱共通教材が廃止されたにもかかわらず、小学校の歌唱共通教材のみが現行と同じ曲目で残った理由の一つには、唱歌やわらべうた、民謡などの日本独自の音楽文化を後世に伝えていこうというねらいがあるのである。

唱歌や童謡わらべうたや民謡などは、日本の音楽文化そのものであり、多くの国民に親しまれている。そして、これからも大切にしていかなくてはならない音楽文化であることに異論はないであろう。歌唱共通教材として示されている曲のほかにも、人々に親しまれ、日本人の心情や生活に深くかかわっている曲も少なくない。それらの日本のうたを、様々な題材で教材として取り上げ、子供たちの音楽的な力を伸ばすとともに、日本の素晴らしい音楽文化として子供たちに伝えていくことは、たいへん価値のあることであろう。

なお、民謡やわらべうたなどは、それぞれの地域に根ざしたものにこそ味わいがあるものが多い。子供たちにとっても親しみやすく、各学校で積極的に教材として取り上げていく必要がある。地域の特色を生かした学校教育を進めるという観点からも、今後、各地域に伝わるわらべうたや民謡を教材化することがたいへん重要なこととなってくるであろう。