プロモーション・ビデオの有用性と商品価値
ひと昔前はMTVの影響もあり、PVがテレビを通じてユーザーに頻繁に紹介されていたが、歌番組の衰退によってPV紹介の機会が激減し、一時は「とりあえず作っておくか」的なプロモーション・ツールに成り下がってしまった感があった。

このままPVは電波メディアから見捨てられてしまうのかと思われたが、ところがどっこい近頃復活の兆しを見せているのである。理由はそう、カウントダウン番組の興隆とCSデジタル放送の誕生である。

PVを流す番組がたいへん増えてきている。
また、地方局でもアーティストの紹介と共にPVをオンエアする番組が数多く存在している。

プロモーション・ビデオの問題点
ここで注意すべきはPVの著作権問題である。PVは元来、その名の通り、宣伝広告目的で製作されてきた。したがって、レコード会社もその多くが宣伝広告費枠で製作費(1本あたり、平均150~ 200万円)を捻出してきたのが実情である。

しかし、そのPVが最近、当初想定していた以上にその商品価値が高まりつつある。そして、すでにレコード会社はPVを放送事業者に提供する際にPV使用料を受け取っているケースがあるのだ。

レコード会社では受領する使用料がそれほど大きくないため、雑収入として計上している会社が多いが、その際、レコード会社からプロダクションヘの分配があったというのはおよそ聞いたことがない。

そもそもレコード会社とプロダクションとの間の専属実演家契約書や原盤契約書にPVの利用についての条項が入っているかといえば、ほとんどの契約書に規定がないのが現状である。

ではプロダクションはこの問題をどのように考えるべきなのであろうか。PVは著作権法上、映画の著作物に該当する。以下にPVの権利関係を見てみよう。まずPVにおいては、製作者つまリレコード会社が著作権を持つことになる。

もちろん、プロダクション自身がPVを製作する場合はプロダクションがPVの著作権者となる。

映画のプロデューサーや監督、撮影監督、美術監督、特殊撮影監督などをモダン・オーサーと呼び、著作者の地位を持つが、法律上は著作者人格権のみとなる。具体的にはPVの無断改変やクレジット表記などについての権利主張ができるだけだ。

一方、映画に使われる小説、脚本、音楽等の著作物の著作者はクラシカル・オーサーと呼ばれ、映画の原著作物の著作者または映画に使われた独立の著作物の著作者として、映画そのものとは分離して保護される。PVの場合、台本の著作者の権利はPVとは別に保護されるし、楽曲の著作権はJASRACが通常通り管理することになる。

さて肝心のアーティストはどうか。これは映画の利用についてはサントラ盤化を除き、権利が働かなくなる。通常、PVの音源はレコードなのでサントラ盤化というのはありえない。

したがって、PVの利用については二次使用料も含めて、一切、権利主張ができないことになる。しかし、ここで大きな問題が1つある。アーティストのPVへの出演はあくまでもレコード・プロモーションが目的であり、市販用ビデオにするというようなPVの目的外利用は別途協議事項になると解釈するのが妥当だからだ。

まれにだがレコード会社とプロダクションとの間の専属実演家契約書や原盤契約書にPVを市販した場合、アーティスト印税はレコードやCDの印税規定に準拠するという条項が入っているケースも存在する。その場合、アーティスト印税が(税込価格一消費税一容器代)× 1%である場合、PVもこの計算式でアーティスト印税を算出するということだ。

ただし、PVの映像にアーティストが出演していないケースをどのように考えるかという問題もある。とにかく、PVを市販用ビデオとして発売した場合のアーティスト印税については、詳細な規定をあらかじめ契約書に盛り込むことが必要である。

プロモーション目的であってもレコード会社にPVの使用料が入ってきたら、当初(出演時)の合意範囲を逸脱するものだろう。なぜなら、PVというのはレコード会社の無償提供が前提となっているからである。

一方、レコード会社としてはPVの使用料によって少しでも製作費を回収しようとする。アーティストに対する対価は製作費がリクープしてからだという考え方もあるだろう。この問題はそもそもいまだにルールもなければ、真剣な話し合いもなされていないというところに根本的な問題があるのだ。