アーティストがツアーに出るときメンバーのやることリスト
チーム・メンバーの役割
アーティストがツアーに出る時、そのアーティストの各チーム・メンバーがやることは以下のとおりである。

パーソナル・マネージャー
アーティストのチームのトップとして、パーソナル・マネージャーがツアーを担当する。パーソナル・マネージャーはまず、うまくツアーをお膳立てしてアーティストを送り出す。アーティストにとって可能な限り最高の条件でエージェントが契約を行なうようにして、ツアーの準備ができると、あとは自動的にそれが進んでいくようにするのである。パーソナル・マネージャーが調整しなければならないのは、
1スタッフ、機材の移動手段。
2ツアー・クルーの雇い入れとその役割の振り分け。
3ホテルの予約。
4ツアー中の集金。
5プロモーター(アーティストを呼び、ホールを借り、コンサートの宣伝をやったりする人たち。) と契約し、彼らの仕事ぶりを監督する。
6.持ち上がってくるすべての問題の解決(機材の紛失、宣伝の不手際、売れ行きの芳しくないコンサート日、安全性の不備、などなど)。
アーティストが大物になってくると、これらの各種義務はロード・マネージャーかツアーの経理係のどちらか、もしくはその両方の手に委ねられるが、最終的にはパーソナル・マネージャーがその責任を負い、お金がその手元に集まってくるのである。

エージェント
エージェントはマネージャーとともにツアーのブッキングを行なう。プロモーターと契約を結ぶのもエージェントだ(プロフェッショナルにショーを運営し、お金を持ち逃げしないようなプロモーターを選ぶことも仕事のうちである)。アーティストがまだ駆け出ししの場合は、エーシェントはそのアーティストをブッキングするよう、プロモーターに働きかける。アーティストがキャリアを積んでくれば逆に、プロモーターからブッキングを迫られることになる。エージェントとパーソナル・マネージャーはまた、ツアーの以下のような点を決めていく。

旅程
旅程というのはツアーのルートと演奏を行なうホールのことだ。有名アーティストの前座として同行する場合なら、旅程はただ言われたところで演奏すればいいだけだが、もし自分がメイン・アクトを務めるツアーであれば、この旅程が重要になってくる。ルートの決め方で、大金が儲かることもあれば大損をすることもあるのだ。

ニューヨークからスタートしてオレゴン、そしてフロリダまでを4日間でこなす、などというツアー計画を避けるのはもちろんである。使いたいコンサート・ホールが(サーカスやアイスホッケーのゲーム、それに他のロック・コンサートなどもあるので)いつでも使えるわけではないが、それをやりくりする手際はちょっとした見ものと言えるだろう。

イメージツアーがアーティストのイメージにどのように影響するだろうか? これにはふたつの要素が考えられる。
1 . もし前座としての出演なら、メイン・アクトのアーティストのファンが自分の観客にもなりうるか、ということ。ヘヴィメタル・バンドであれば、オズモンド・ファミリー再結成ツアーの前座なんていうのはやりたくないはずだ。
2. どんな場所で演奏するか? 高級住宅街の中にある5,000席の最新円形劇場でやる場合と、場末にある定員3,500人の座席なしの古びたホールでやる場合とでは、おのずと違うというものだ。

ラジオ・プロモーションの危険をかわす
どれくらいの数のラジオ局がコンサートを“主催”あるいは協賛したり、チケット・プレゼントとかライヴ・レポートをやったりしているか、気にかけたことがおありだろうか?
これらはもちろん偶然の産物ではなく、必ず十分に計画を立てた上で行なわれているのである。その際、相応しいラジオ局を選ぶこととは別に、同じマーケットにある他のラジオ局の機嫌を損なわないようにしなければならない。

チケットをいつ売り出すか
これはマーケットによって違ってくる。あるマーケットでは前売券がよく売れるし、またあるマーケットではウォーク・アップが中心になっているのだ。それから、ショーのどれだけ前にチケットを売り出すかが重要な鍵。遅すぎても早すぎてもだめだし、マーケットを席巻するような大きなツアーと同じ日に売り出すのは避けるようにしないといけない(あるいは、同じ日にならないよう注意しないといけないのは向こうの方かもしれない! )。

チケットの値段
最初は、マーケットが許す限り最高の値段にして「いただけるものは全部いただくという線でいきたいと思うかもしれないが、この決定はそのように簡単なものではないのだ。多くのマネージャーとエージェントは割り切って「いただけるものは全部いただく」の立場をとっている。彼らの考え方には説得力がある。人気がいつまで続くかは誰にもわからないのだから、追い風に帆をかけて、調子がいい時はたっぷり稼ぐ、といった具合である。

しかしその一方で、人望の厚いマネージャーやエージェントたちは、安い値段のチケットの方が多くの人を引きつけて前宣伝をあおり、高いコンサートには行けないような人でもショーに来ることができるし、長い目で見ればこういうやり方のほうがいいんじゃないかと、また違った見方をしている。こういった議論をするときりがないけれど、これは、どういった観衆に見てもらいたいかということにも大きく関わってくる。たとえば、高いチケットだと年若い子供たちにとっては、ある程度年齢のいっている人たちに比べて経済的に苦しくなる。それに、アーティストのキャリアによっても違ってくる。もし一流アーティストであれば、将来のことを長い目で見るという心配はそれほどいらなくなる。誰の考え方もそれなりにもっともなものなのだから、気軽にこの議論に加わってみるといいだろう。

保証金
エージェントはまた、保証金(deposit)を集める任務も負っている。これはプロモーターから前もって支払われるお金のことだ。アーティストのスケジュールを押さえておくために、プロモーターは通常、全額の50%をショーのおよそ30日前に払うのだ。これはアーティストが(少なくとも完壁に)だまされないようにする保険のようなものである。だから、たとえば1万ドルのショーの契約を結んだとすると、プロモーターは5,000ドルを前払いするわけだ。この保証金はエージェントが預かり、アーティストがギグを行なった時に支払われる。

プロモーター
プロモーターは各マーケットの地元にいる人間で、コンサートのためにアーティストを雇う。コンサー卜のリスクをすべて背負い込む興行主がプロモーターなのである。彼らはホールを予約し、お金を使ってコンサートの宣伝をやり、ショーが最大限の効果を上げるよう、運営全体を統括する。プロモーターというのは本当にしんどいものだ。失敗したら失うものも大きいわけだし、一方アーティストが成功すれば、アーティストはプロモーターを締め上げてその取り分を制限するようになる。結果としては、どれだけ稼いだかを報告する段になってプロモーターは、お定まりの“思いつく限りの費用の控除”を行なうわけである。

ビジネス・マネージャー
ビジネス・マネージャーはツアーの財政面すべてを受け持つ。この仕事はツアーがスタートする前、それがもたらす収入と支出、どれだけ儲かり、あるいは損をするかといったことを予測することからまず始まる。もし新人バンドだったら、その予測次第ではレコード会社に駆け込み、ツアー・サポートを出すよう会社をたきつけるだろう。どんなレベルのアーティストであれ、ツアー・サポートで惨謄たる失敗は避けることができるわけだ。

ツアーに出る時、すべてのツアー・スタッフ(機材のセッティングをしたりクルーの監督をしたりする人たち) に給料が支払われるが、彼らへの支払いはビジネス・マネージャーが受け持つ。アーティストの出演料がちゃんとプロモーターから回収されているか(もしロード・マネージャーがいるのなら、これを実際に行なうのはロード・マネージャーになる) とか、すべての伝票(旅費、宿泊費、食費など)が支払われているかを確認するのもビジネス・マネージャーの仕事である。そして、ツアーが予算超過にならないようにし、危なくなりそうだったら前もって警告を発するのも彼らの責任だ。

ロード・マネージャー
もしアーティストにロード・マネージャーがついていれば(いなければパーソナル・マネージャーがその仕事をやることになる)、その役割はツアー中すべてがスムーズに進行していくようチェックすることにある。

つまり、ホテルが予約されているか、飛行機チケットの目的地に間違いがないか、バスが決められたところに行っているか、アーティストがバスや飛行機にちゃんと乗り込んでいるか、特定のグルーピーだけが警備の目をすり抜けられるようになっているか、などといったことだ。各ショーのお金を集めて、しかるべき場所に保管するのもロード・マネージャーの責任になる(アーティストがキャリアを積んでいくにつれ、お金の面を受け持つツアー用の経理係がつくようになる)。