描かれた心象風景が問題になった曲

描かれた心象風景が問題になった曲の代表は、何と言っても高倉健の『網走番外地』(昭和四〇年)だ。歌詞のなかに格別な問題となるような語句や言い回しがあるわけではないが、歌全体のイメージが、犯罪を肯定し反社会的な風潮を助長する恐れがあると判断されたといわれている。

性表現についての規制で、放送禁止歌になった曲も数多い。タイトルだけで一目瞭然な『しおふき小唄』や、黒沢年男が歌って大ヒットした『時には娼婦のように』、つボイノリオが歌った一連の駄洒落ソング『金太の大冒険』や『極めつけ― お万の方』などに加え、意外なところでは原由子の『I love youはひとりごと』や、おニャン子クラブの『セーラー服を脱がさないで』も一時は問題になった。

北島二郎のデビュー曲『プンガチャ節』が、実は放送禁止歌だったという事実はあまり知られていない。 一九六二(昭和三七)年に発表されたこの曲は、ヒットの兆しを見せかけたときに、歌の合間に入る「キュッキュッキュー」という合いの手がベッドの軋む音を連想させるとして、放送禁止に指定されたという。ジョークだとしてもレベルが低過ぎる。

都市伝説のようなものではないかと僕は思っていたが、つい最近、雑誌のインタビユーで北島三郎本人がこのことを語っている記事を目にしたばかりだ。どうやら紛れもない事実らしい。でも、ならば「オバケのQ太郎」のテーマソングが規制されない理由がわからないけれど。

ありそうで意外にないのが、天皇制に触れた曲だ。調べた範囲では、岡林の『ヘライデ』ぐらいだろうか。

歌詞自体は天皇が屁をこいたなどとたわいもない内容だが、 一九九六年に復刻された岡林のライブCD 「狂い咲き」からは、オリジナルのaレコードに収録されていたこの『ヘライデ』だけが、いつのまにか丸ごと削除されていた。

これは最近の事例だが、忌野清志郎が『君が代』をパンク調に歌ってレコード会社から発売を拒絶され、大きな社会問題になったことは、まだ記憶に新しい。


『自衛隊に入ろう』を聴いて入隊?
そもそも高田渡への取材を申し込んだ理由は、『自衛隊に入ろう』を取り上げるつもりだったからだ。

彼のレパートリーには、『二億円強奪事件の唄』など他にも何曲かの放送禁止歌があるが、自衛隊勧誘の謳い文句をそのまま歌詞にした『自衛隊に入ろう』は、僕の世代なら誰もが知っている放送禁止歌だ。

言うまでもなくシニカルなパロディだが、この歌詞を額面どおり受けとって本当に入隊してしまった人が当時いたらしい。ライプが終了した後の会場のロビーで、「そんなこともあったから、ステージでも『自衛隊に入ろう』はずっと封印しているんだよ」と高田は語ってくれた。


発表はデビューしたての一九歳のとき。『悲惨な戦い』を歌ったなぎらにも共通しているが、二人ともデビュー直後の大事な時期に、まるで洗礼のように放送禁止歌の規制を受けている。