音楽大学で学べないこと
19世紀末期、すでにヨーロッパの音楽学校が順調に機能している時期に、ドイツ人女性の生徒が音楽雑誌に手記を発表しています。
「音楽学校の短所」と題されたその内容を要約すれば、彼女は最初、個人のピアノ教師に習っていましたが、見聞を広めるのもよいと思い、先生の勤める学校に入学したところ、そのレッスンはお座なりとなり、個人レッスンのような細やかな心遣いや心の通い合いはなくなったと言うのです。

ときに強い個性や目立った才能を持つ生徒がいれば、レッスンは彼らに独占されてしまう、とも書いています。
結論として、芸術は一対一で伝授されるべきであり、個人レッスンの補足として音楽学校があると彼女は感じたようです。

これはもっともなことで、教育の原則は平等ですから、大前提として誰か一人だけを贔屓することはできません。しかしクラス授業では、生徒間に能力差があるために、平等に教えようとしても、どうしても相手によって教え方を変えざるを得ないことも起こるのです。その意味で、この女性が言うように、音楽大学では全般的なことを学び、同時に、個人レッスンも受け続ければ万全であると考えます。

しかし、現今では大学の常勤講師は自宅で個人的に金銭を得てレッスンすることは禁じられています。どうしたらいいのでしょうか。
そのためには、在学中はその先生と相談し、必要なときだけプライベートなレッスンを受け、レッスン代が発生しないように取り決めるのが望ましい方法です。学校の生徒に足りないところがあれば、補講するのが教師の務めなのですから…。

ただ、これは生徒側から先生の時間を拘束することになるので、実際には難しいかもしれません。その場合は在学中だけは待つとか、先生側の良識に任せましょう。発覚した場合、その教師は最悪の場合、処罰の対象になりますので、危険なことはなさらないでしょうから。

もう一つ、学校案内などで見て、ある先生に習いたいと思っても、必ずしもそうならないことも知っておきましょう。ただこの場合も、個人的にその先生に会って頼めば、教務課とかけ合って、希望通りになることもあるので、諦めないで。

しかし、非常勤の場合、逆に教師側がその授業を持てないこともあるのです。


音楽大学の入試必勝法
試験当日は早起きしましょう。忘れ物をしないように確かめて。交通機関の事故も考えに入れて早めに出かけるベきですが、不幸にして事故に遭ってしまったら、携帯電話で連絡を取ったり、遅延証明書をもらうこと。理由が公的なものであれば、受験に不利になることはありません。

1.専攻実技…最も重要な科目です。暗譜していても楽譜は持参すること。ピアノなどの場合、手が冷えるならカイロよりむしろ温かい飲物を。汗拭きとしてハンカチも忘れずに。一般的に髪が額に垂れているのは演奏家向きでないと評価されてしまいます。部屋に入ったなら一礼し、試験官を落ち着いて眺めること。伴奏者が先方の場合は速度を体で促し、あまりにも違う場合には止めて口頭でテンポを伝えましょう。声楽の場合は姿勢や手の位置を決めておきましょう。仮に失敗しても決して止まらないこと。

2.副科実技…ピアノ科以外の人が弾くピアノということになりますが、不得意なら拍をゆっくり取ること。速く弾くよりむしろしっかり弾くことを心掛けること。そのためには常に心の中で拍を刻むことと、旋律を声に出さずに唱えること。止まってしまった場合は、最も近くの戻りやすい場所から弾き直すこと。試験要項に「途中で切る」と書いてあっても、勝手に止めないこと。また、手首にかぶさる袖の服はやめましょう。

3.聴音…耳や鼻の状態を正常にしておくこと。その後に歌うからといってマスクをしたまま受けない。鉛筆は芯が折れることも見越して多めに用意し、清潔な消しゴムと定規も忘れずに。書かないほうの手で拍を取りながら書くこと。また、最初から書かず、わかったところから書くこと。どうしても不明ならリズムだけでも、旋律の上下を示す線だけでも、あるいは休みだけでも記すこと。何かが書いてあれば、それが得点に結び付くのです。和声聴音はソプラノ→バス→アルト→テノールの順に書くと成功しやすい(先生によってはバスからと言うが、それは逆説的)。時間が余ったら少しでも美しく書き直す。解答用紙が数枚あるときは、その順序を間違わないこと。

4.視唱…予見時間中にまず全曲を見渡し、拍子・調・形式を調べ、どのくらいの速さで歌うかを決めておく。クライマックスも見つけ、そこを最も盛り上げる。伴奏付きではそれに消されない程度の声で、試験官に届くように。音高が不安になっても読み続けること。

5.コールユーブンゲン…何を試される問題なのかを察知する。そして受けたレッスンを思い出す。拍は取るべきだが(手で)音は立てないこと。本の後半の課題だけが出ると思ったら大間違いである。

6.楽典…制限時間があるので時計を置き、取りかかる時間配分を決めておく。得意とする問題から解いてしまい、熟考するべき時間をその後に充分取る。文章題は配点が大きいので、必ず何か書くこと。聴音同様、白紙ということはありえない。解答用紙で手を切って血を付けないこと。

7.学科…センター入試もそうだが、投げないで全問を解くこと。筆記での字の綺麗さも採点の対象となることを忘れないで。

8.面接…高校生なら制服で受けるべき。相手の目を見て落ち着いて答える。質問の意味が不明なら聞き直しても構わない。答えると不利になりそうな悪意のある質問には「どうお答えすればよいかわかりません」、「そのご質問にはどういう意図があるのですか」などと答えよう。必ず救いの手が差し伸べられる。」
よく、校門で親が待っているのを見かけますが、過保護を宣伝しているようなもの。家で待っているように頼みましょう。なお、試験のような極限状態は神経が鋭敏になるもの。ほんの少し漏れる音からもヒントが得られるはずです。