1.歌うときも話すときと同じ息のしかたが理想
歌声も話し声も、その発声のメカニズムは同じです。歌声でも、理想をいえば呼吸をしていることを感じさせない話し声のような、自然な呼吸を用いるべきなのですが、なかなかうまくいきません。声の高さ、大きさ、などの幅は、歌声のほうがはるかにありますが、息を吸う時期が限られていて、メロディの途中で自分の好きなように息を吸うことはできません。必要な呼気量が違ってきます。

なにもしない平常時の呼吸とスポーツをやっているときの呼吸が違うのと同じように、歌声と話し声では呼吸法が異なるのはしかたありません

少し詳しく、呼吸のメカニズムを説明しましょう。ふつうものを考えたり、読書をしたり、リラックスして話をしたりしている場合、あなたはきっと呼吸していることを意識していないでしょう。それが当たり前なのです。それはなぜかといいますというまでもなく、人間は生まれたときから息を吸って酸素を体の中に取り入れ、炭酸ガスを吐きだして、という呼吸を繰り返して生きているのです。

息を吸うのが先か、吐くのが先か、という点ですが、胎児は、分娩直後にまず外界の大気を吸ったあとに第一声、すなわち産声を発します。その後は成人と同じように、呼吸連動を反復します。吸気を行う方式の一つは、胸式呼吸です。

肺を取り囲んでいる胸郭を拡張すると、その内側の肋間腔が減圧し、肺はそれに吸着されるような形で拡大します。肺の拡大によって、大気が向然に外から流れ込んでくるというのが吸気の腺則です。口で吸引しようとして入ってくるものではありません。この方式を、胸式呼吸といいます。

もう一つの肺を拡張させる方式は、肺の下にある横隔膜という筋膜を下方に下げて肺を拡大させる方法で、これを横隔膜呼吸(腹式呼吸)といいます。胸郭と横隔膜の緊張で拡大された肺が、それらの緊張から解放されて収縮していくときに、呼気となります。

そして自然収縮力をさらに補い、促進させるための、胸部腹部、背部、腰部などの気筋が呼気を助長します。
この働きは自動的に行われていて、私たちは意識して「吸おう」「吐こう」と思わなくても、自然にできるようなしくみになっているのです。

横隔膜というと、一般にはしゃっくりをしたとき、肋骨の下が異常に「キュッ」「キュヅ」と上下運動する、おかしなもの、みたいに思われているようですが、なかなか大切な器官なのです。最近は胃のレントゲン検査をするときに、患者さんにテレビで見せることのできる機器が普及しています。胃を映すときに胃の上方で膜が上下するのが見られるはずですが、それが横隔膜です。機会があったら、注意して見てください。

呼吸にはこのように横隔膜の働きが重要な役割を果たしているのですが、残念ながら横隔膜を自分の意志で直接コントロールして、上げたり下げたり、同じ状態を保ったり、というようなことは困難なのです。

ところが歌う場合、メロディの切れ目のほんの一瞬に、次のメロディを歌うのに必要な空気を吸い込み、メロディが切れるまで、その空気を肺の中にため込んでおかなければなりません(呼気保持といいます)。

呼気保持が悪いと、息切れして、メロディの途中で息を吸わなければ苦しくなってしまいます。しかも、ためておいた空気を上手に出せないと、震え声になったりします。呼気保持をうまくし、効率よく呼気をコントロールするためには、なんとかして横隔膜を自分の意志でコントロールする必要があるのです。



2.肺活量は歌のうまさと関係ない
「声量がなくて、大きな声が出ないが、肺活量のせいだからしかたがない」なんてあきらめ顔で言うひとがよくいるようです。声量とはいったいなんでしょう?

狭いところで聞いていると大きく聞こえて、いわゆる声量のあるような声だけれど、遠くへ行くと通らない声があります。逆に近くでは大きく聞こえなくても、遠くまでよく通って聞こえる声もあります。どちらが声量があるといったらよいのでしょうか。

声楽では呼吸と喉頭の効率がいいこと、物理的にいえば少ない声門下圧で声帯が振動し、声に変わることが望ましいわけです。声帯は薄くし、声門閉鎖は軽く、しかしピタッときれいに閉まらなくてはいけません。→声帯や声を出すメカニズムは複雑なようで簡単だった

肺活量は大きければ有利ですが、少ない呼気量をいかに有効に使うかというくふうが大切です。肺活量の大きさは歌う場合の1つの条件ではありますが、けっして第一条件ではありません。また、声量には共鳴効果も影響しますので、共鳴器官の利用のしかたも大事です。

フォークソングの声の出しかたは、洋楽の場合より声帯を厚く接触させ、声門閉鎖が強くなりますから、呼気圧を強くしなければ声にはなりません。演歌の場合はもっと極端です。
フォーク以上に呼気圧が必要になります。

フォークや演歌の場合、呼気圧を上げればそれだけ声は大きくなりますが、響きが単調になるという欠点があります。呼気のロスが多くなります。

聞く側にとって、声が大きくなる、小さくなる、という感覚は、小さな声でもきれいにマイクに入り、盛りあがりの部分がつくられていれば、歌全体の印象が大きく、声量のある歌に感じるでしょう。その効果をねらうほうが有利だと思います。

演歌の場合も、あの独特の絞りだす声のときにはかなりの呼気圧が必要ですが、ほかの部分では、声楽発声のようなきれいな声で効率よく歌ったほうが有利です。こうしてメリハリをつけたほうが、上手に歌えるのです。
歌がうまくなるということは、いわゆる声量のある大きい声が出せるということと直接の関係はないのです。



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