音声多重カラオケとは
音声多重カラオケとは? 家庭用のカラオケでは、「音声多重」を売り物にした機械やそのソフトがよく出回っています。「音声多重」という言葉、そもそもはテレビの2か国語放送や、サラウンド効果を狙った番組の音声などを意味していたのですが、カラオケの世界で「音声を多重にする」ことは、カラオケに歌手の歌声をのせるという、少々安易な意味合いになっています。

曲はLとRの2トラックで再生されることは前にも説明しましたが、ただここには矛盾があります。このシステムでのカラオケの伴奏部分は、ステレオ方式では流れてこないということです。「ステレオ」というとすぐ、レコードやテープやCDを聴く機械のことを想像してしまう人もいるかもしれませんので、簡単にここでいう「ステレオ方式」について説明します。

ある人がしゃべっているところを録音するとします。ここでマイクを1本だけ立てて録音するのと、左と右とに1本ずつ立てて録音するのとでは、声の残響や、声がどの方向から聞こえてくるのか、声がマイクからどれだけ離れているか、などの臨場感において格段の差が出てきます。

このように音を集める源が1つ(モノラル)ではなく、複数でより立体的に音が集められるようにしたのがステレオという方式です。通常はL(左)とR(右)の2つです。このLとRで違った音を録る(あるいは再生する)ために、それぞれ1つずつトラックが要るわけです。また、それぞれのトラックにはべつべつの音が入っていると考えるのが、ステレオ方式なのです。

しかし多くの家庭用カラオケの場合、伴奏部分はステレオ方式ではありません。というより、スピーカーが1つしかないモノラル方式のため、たとえソフトがステレオで収録されていても、その効果が期待できないのです。

しかしLとRの両方のチャンネルを使っています。せっかく2トラック使っていながら、流れてくる音はステレオではなくモノラル。これではもったいない!

そこで考え出されたのが、音声多重カラオケというわけです。つまり1つのトラックには伴奏を、もう1つのトラックにはニセ歌手の歌声を入れたのです。

お手本も聴けるし、普通に流しておけば単なる曲だし(歌手はニセモノなのであしからず)、カラオケをしたいときは伴奏だけを流し、歌手部分を消しておくこともできます。 またあなたが歌っているときは歌手の歌声が消え、メロディがわからなくなって歌を中断したときにはまたニセ歌手の歌声が聞こえてくる、という機能もあります。

また音声多重カラオケでは、ニセの女性歌手と「銀座の恋の物語」をデュエットすることもできます。男性歌手の歌声も入っていますが、あなたが歌っているときはそいつは消えちゃうんですから。でもこれだと、一緒に歌う部分では、あなたの声で女性歌手の声が消されてしまい、一緒には歌えませんね。それだけちょっと悲しいことですが。

しかし今では、タイトーの通信カラオケ「X2000」に付属している「うたうま」などの機能に見られるように、デュエット曲でも、男性か女性か、その一方を歌うだけで、もう一方のパートの歌も出てくるという技術があります。また、男性でも女性パートを歌えば、声が自動的に女性の声になってスピーカーから流れるというものもあります。たった1人でもデュエットができる時代になってしまいました。


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