1.ビートとは
ビートとは「打つ」ことですが、よく「ビート感を持って歌う」というような表現をします。これは、スピード感にも共通した感覚で、平坦な歌い方ではない、メリハリのある歌い方を意味しています。

ビート感のない音楽は、生き生きしていません。ですから、いつもビートを感じてください。それが、たとえスローバラードであってもです。

ビートに対するカテゴリーはありませんが、日本人はビートを左右で捉えがちです。それに対して、欧米人は前後のステップや上下の動きで感じているのが大半です。日本の伝統として、芸能は能楽や民謡、踊りなど、すり足によって表現されてきました。もともと日本の伝統にはない感覚なので、お年寄りがこの感覚を捉えるのは難しいです。けれど、若い世代であればジャズやR&B、ロックを聴いているので、わかってもらえるでしょう。

大きなアクションで、息をたくさん吸って、より大きなビート感をイメージして歌いましょう。
そして、このビート感は歌の表現で大切な「グルーヴ」へとつながります。

ポイント
歌うことは、健康維持のためにもとても効果的です。身体が悪くなると声も落ちてきます。声をキープすることによって、身体の健康もキープできるということにもつながります。つまり、声をいつも出しておくことです。すると病気を寄せ付けないと言う専門医もいます。

発声によって頭の血管をいつも広げているので、脳の健康にも効果的です。歌を歌っている人は全体的に明るい人が多いのです。よく喋りますし、気持ちも前向きですし、嫌なことがあっても歌えば気分転換できるし、ストレスも解消します。人類だけですからね、歌えるのは。


2.オンビートとアフタービート
歌い方には、オンビートとアフタービートがあります。
例えば「1、2、3、4、1、2、3、4」というリズムがあります。これはオンビートでは「いち、に―、さん、し―…」というカウントですが、アフタービートでは「いちと―、にいと―、さんと―、しいと―…」の「と―」の部分にアクセントを持つようにカウントします。

ポイント
オンビートとアフタービートの練習で、効果的な方法があります。机の上で指をリズムに合わせて「トン、トン、トン、トン…」と叩くのです。オンビートでは指が机を叩いたときカウントします。
逆にアフタービートの場合は、指が机から離れた一番高い空中の位置でカウントします。

ポイント
2ビート以外のリズム、つまり4ビートも8ビートも16ビートも、すべて4ビートの2拍と4拍目にアフタービートのアクセントがあることがわかります。このことから、4ビートが基本のリズムということがわかります。

さて、ここで気になるのが2ビートというリズムです。
2一2というリズムは「1小節の中に2分音符が2つ入っています」というリズムを示しています。
この2 一2というリズムだけが、アクセントが3拍目と、他のリズムと比較すると特殊です。


3.グルーヴ感とは
グルーヴ感というのは、ビートからくる「うねり」だと思ってください。曲全体を聴いていると、ドラマと同じようにクライマックスに向かうための山場があります。その山場はサビであったりリズムであったり、いろいろな要素がありますが、曲を構成しているすべての要素の「うねり」なのです。
非常に感覚的なイメージですが、このグルーヴ感はジャンルを問わず、いろいろな歌に内在しています。

特にヒット曲やスタンダード曲ほど、ハッキリしているようです。
グルーヴ感というと、どうしても黒人のR&Bやブラック・コンテンポラリー、最近ではヒップホップといった黒人音楽のジャンルだけにあるのではないかと思われがちですが、決してそんなことはありません。ジャンルを問わずいろいろな曲にグルーヴを感じてほしいのです。

例えば、演歌のグルーヴとはどんなものでしょうか?
最近であれば、氷川きよしの『箱根八里の半次郎』のフレーズ「♪やだねったら、やだね…」に、とてもグルーヴを感じます。そこには、身体が自然に動くような「うねり」があるのです。

よく、演歌は日本のR&Bだと言う人がいますが、実際このグルーヴ感にはR&Bに相通じるフィーリングがあるようです。それに、古の曲ですが都はるみの『アンコ椿は恋の花』なども、マイクを握り締めて身体をよじり、絞り出すような声でサビを熱唱する姿は、まさに黒人のブルースに似ています。一方、井上陽水がバラードを歌うときのリズムの取り方を観察してみましょう。

例えば『少年時代』を歌うとき、彼は4ビートではなく8ビートでリズムを刻んでいます。曲はゆったりと流れていますが、かなりノリのいいリズムで歌っているようなビートの取り方をしています。つまり4ビートのバラードを、8ビートのグルーヴ感で歌っているのです。それがこの曲の緊張感となって、スローバラードであるにもかかわらず、間のびした感覚を全く感じさせないところなのでしょう。

このように、グルーヴ感は曲全体のカラーを左右する大切なイメージであるといえます。
前述したように、4ビートの曲をあえて8ビートのように感じて歌うことも、歌い手の自由です。そういった感性やイメージを持つことで、曲のグルーヴ感を自在に演出するのも歌う人のテクニックのひとつです。

こういった歌っている側の意識は、聴いている人にはわかりません。しかし、グルーヴの変化は敏感に感じ取ることができるはずです。

カラオケで自分とは実力的に大差がないと思っている友達や同僚が、なぜかよく受けたり拍手が多かったりする理由には、意外とそんなことが関係している場合もあるのです。
歌のうまさというのは、音程やメロディをはずさず、きっちりとテンポも崩さずに大きな声で歌うだけではありません。

これは実際にあった話ですが、あるプロの演歌歌手が、得点の出るカラオケで自分の持ち歌に挑戦しました。当然、周りのお客さんは、100点満点が出ると思って聴いているわけです。ところが、機械が出した得点は、なんとたったの60点という素人並みの点数でした。さすがに傷ついたその歌手は再度チャレンジしましたが、結果は同じ。何度やっても合格せずに、結局その機械が故障しているということで、その場は一件落着しました。

しかし、このエピソードが物語っているのは、まさに歌のうまさというものの難しさです。いくら音程もメロディも間違えずきっちりとテンポに乗って歌い、機械が100点満点を出したとしても、聴いている人は何か物足りなさを感じてしまうわけです。
基本は、あくまでも楽譜にある歌い方です。それは否定しませんが、それを超えるプラスアルファが歌をうまく聴かせ、味わい深いものにしているのです。

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