1.フェイクとは
「フェイク」という音楽用語は、最近になってよく聞くようになりました。では、いったい何なのでしょうか?簡単に言えば、歌のメロディをベースにしたアドリブのことです。ですから楽譜には載っていない自分だけのメロディを即興でアレンジしながら、曲を歌っていきます。

フェイクとはブルースを音楽的なルーツに持つ黒人のシンガーによって生み出されたテクニックで、スタンダードナンバーのメロディを崩しながら、民謡のこぶしのようなフレーズを歌います。もともと英語でフェイクは「贋作」とか「にせ物」といった意味です。つまり、実際のメロディとは違ったメロディを歌うことから、この名がつけられたのでしょう。

民謡や演歌のこぶしとフェイクが何となく似ていると解説しましたが、決定的な違いはその歌い方にあります。
民謡は流れるような唱法でこぶしを作る、いわば曲線的な唱法です。それに対して、R&Bでは一音一音を際立たせて歌います。言い換えれば、滑らないように歌います。

このフェイクを自分のものにすることができたら、ある意味で黒人系の音楽をマスターしたといっても過言ではないでしょう。それほど、このフェイクには黒人音楽の本質が凝縮されているのです。


フェイクは完全コピーから
フェイクを歌うためには、まずフェイクを知らなくてはいけません。しかし、残念ながら日本ではこの唱法は歴史的にまだ浅く、お手本となるシンガーが少ないのです。何よりも日本にはフェイクするという音楽文化がなかったので、それ自体を勉強するにはまずコピーすることが最短の上達法なのです。

それも中途半端なコピーではだめです。完全にコピーするくらい、フレーズの一音一音まで細かく分解してコピーをしましょう。
日本人が海外のシンガーのフェイクを真似て失敗しているパターンは、「何となくフェイクっぽい感じ」で歌っているからです。

そういった場合、たいていフレーズが流れてしまっています。音程にするとなだらかな曲線で、民謡のこぶしのような感じになっているわけです。
本来、フェイクというのは一音一音が独立した音程になっていて、それが連続しているものです。ですから、ちょっと聴くとフレーズが流れているように聴こえますが、実際にはとてもメリハリのある連続した単音の集合体だということがわかるはずです。

繰り返しになりますが、だからこそ完全にコピーするくらい細かく聞き取り、ゆっくりと真似をしていきましょう。真似をすることは決して恥ずかしいことではありません。いろいろなシンガーのフェイクをコピーして覚えて、自分の引き出しを増やすことは、とても大切なことです。そこから自然に自分らしい、オリジナルなフェイクを完成させていきましょう。


2.フェイクは3分類
一口にフェイクといっても、大きく3つのタイプに分類することができます。
① コロコロタイプ(コロコロとこぶしが回るようなタイプ)=S ・ワンダー、マライア・キャリー、清貴
② シャウト系(熱唱して繰り返すタイプ)=ジェームス・ブラウン
③ 別メロタイプ(元歌と似たメロディを即興の早好きで歌うタイプ)=R ・チャールズ、上田正樹

フェイクとは言葉を換えれば、自己主張、自分であることの証明ともいえます。自分自身でしか表現することができないフレーズなので、こういう歌い方は世界でただ一人、自分だけしかできないという強烈なメッセージでもあるのです。S ・ワンダーなどはワンフレーズを聴いただけで、彼だとわかる独特なフェイクのパターンを持っています。ここまでフェイクを表現手段として昇華させることができれば、「贋作」どころか芸術といえるでしょう。

さらにいえば、曲間を埋めたり、曲の流れを作っていく場合にとても有効です。
例えば、テンションを上げていくときはフェイクの最後の音程を上げて終わり、逆にテンションを落ち着く方向に持っていきたいときは、音程を下げて終えたりします。こうした流れを自由自在にコントロールできるのも、フェイクならではのテクニックといえます。

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