著作者としてあるいは音楽出版社としてJASRACとの関係は重要
「JASRAC」って何?
JASRAC(ジャスラック)の正式名称は「社団法人日本音楽著作権協会」です。 一言でいうと「音楽著作物の使用者に許諾を与え、その使用者から著作権使用料を徴収し、それを著作権者に分配する、日本で唯一の機関」ということになります。

著作権者(著作者本人の場合と、音楽出版社の場合とに分かれる)は、自分の著作権がきちんと保護されるように、そして自分の著作物が使用されるときはきちんと使用料が徴収されるようにするため、JASRACの会員の資格を得ます。

すると会員の著作物はすべてJASRACが管理し、使用者に対しては許諾を出してお金をもらう、といういちいち面倒な作業を一手に引き受けてくれます。すべての流行歌の著作権はJASRACによって管理されている、といっても間違いないでしょう。

カラオケ・ソフトのメーカーは右の文での「使用者」に当たりますので、ソフトに収録する曲の使用許諾を、著作者ではなく、JASRACから受けるのです。当然、使用料の支払先もJASRACです。

ちなみに「使用者」には、カラオケのソフト・メーカーのほかにも、レコード会社、放送局、有線放送所、楽譜や一般書籍・雑誌の出版社、キャバレー、スナック、ディスコ、コンサートの主催者など、ありとあらゆる音楽の使用者が当てはまります。

カラオケ伴奏についての著作権に関する規定は、著作権法に追加されました。カラオケの装置を置いているスナックやボックスは、もちろんこれに当てはまります。ということは「使用料を払わないで営業しているカラオケのお店は、違法営業ということになるわけです。

営業するときは、JASRACから使用許諾を受けます。これらのお店には、JASRACが発行する登録済のステッカーが配付されているので、スナックのドアなどに貼ってあるのを見たことがある人もいるでしょう。そのお店はJASRACに対して、きちんと著作物使用料を払っているのです。→カラオケと著作権について


使用料はどうやって決めるか
カラオケ・スナックやボックスの場合、使用する曲数や曲目で使用料を算出するわけではないのです。

これらの店の場合は、営業している店の面積、坪数、客席数を基準として、使用料をはじき出していきます。JASRACの「著作物使用料規程」に、使用料の算出方法が詳しく定められています。

たとえば、客の座席数が20席までの手狭なカラオケ・スナックの場合だと、常時カラオケが鳴っているという状態でなければ、「月間60時間までの生演奏」というように区分けされ、月額使用料が9千円、などと定められているのです。

ちなみにたとえカラオケでも、JASRACでは「生演奏」という区分になるので、解釈は少々やっかいです。 また、アルコールを提供するお店でも、ホステスがそばにつくお店とつかないお店とでは、使用料を算定する基準が異なるため、その点でも規定はややこしくなっています。


使用料を払わない店には密偵を!
さて、カラオケ・スナックのなかには、カラオケを設置するときにまず使用許諾を得なければならないのに、正式に届出をしないで営業している店もあります。

「著作権?何それ」
「見つからなきゃいいのよ。見つかったら払えばいいじゃない」
という認識の低い店があることは、著作権者の権利保護のため日夜頑張っているJASRACとしては、ゆゆしき事態です。違法営業を見逃すわけにはいきません。そこでJASRACが講じる対策とは!

よく麻薬Gメンなんているじゃないですか。警察の捜査に密着したテレビのドキュメント番組などに登場します。麻薬所持者を調べあげて、現行犯逮捕しちゃうような人たちです。

それにちなみ、名付けて著作権Gメン!JASRACがそう呼んでいるわけではありませんが、一言で表すとすればそういうお仕事です。 カラオケ・スナックに訪ねて行っては、その店の経営者やママに使用料を支払うよう指導するのが彼らの仕事です。

しかしそう簡単に支払う店ばかりではありません。カラオケが設置してあっても、「カラオケなんか使ってないわよ。だから払わないわ」
「うちがカラオケ使ったっていう証拠でもあるの?ないなら帰ってよ」
などと言われ、押し返されてしまいます。

ひどいときには、コワモテの男が裏から出てきて、殴る蹴るの暴行を加えることすらあります。Gメンの仕事は命がけなのです。

しかしここで泣き寝入りをするGメンではありません。こうなったら意地があります。 彼らは店に密偵を送り込みます。つまり彼ら自身が客になりすまして入店し、カラオケを使用しているときには、ちゃっかりテープレコーダーで録音してしまうのです。もちろん客とママとのやりとりもテープに収めておきます。

カラオケを使って営業していれば、使用料は発生します。たとえ1分だけでもです。 そしてその日のうち、あるいは後日、テープを証拠としてママに突きつけるのです。

このようにカラオケの使用現場など、実際に曲が「演奏」されるときの、JASRACの業務管理手数料は、他の場合に比べて高率に設定されています。手数料率の差は、許諾、徴収、使用料の分配などの作業の手間がどの程度かによります。Gメンの命がけの作業からすれば、高率設定は当然のことです。

お父さんがお店に支払う代金のゆくえが、これでおわかりでしょう。ただし特定の作曲家のつくった歌ばかり歌っても、その作曲家ばかりがうるおうわけではないことも、おわかりいただけたでしょうか。


JASRACとのふたつの信託契約の形態
著作者として
あなたが著作者つまりー作家、一個人として登録し、JASRACと信託契約を結ぶためには、
①原則として過去1年以内に、第三者によって、日本国内で著作物が公表されていること。また、公表前であっても、公表されることが確定していることが必要です。
②あなたは「信託契約申込金」、「入会金」、「年会費」として計約6万円を準備する必要があります。

音楽出版社として
JASRACへの音楽出版社としての登録は、
①作品がCDなどの形で公表された実績あるいは公表されることが確定していれば、②「信託契約申し込み金」「入会金」「年会費」計約19万円を支払い、「信託契約」手続きをすることによって行われます。

さらにJASRAC自体の運営に「寄与する」意思があれば、まずは準会員として入会し、入会後3年を経過した時点で分配実績額が一定以上であるなどの条件を満たせば、理事会の承認を得て「会員」となることができます。

作品公表実績(JASRACと信託契約を結ぶための条件)
著作者(作家)としての場合
過去1年以内に、第三者によって、日本国内で管理楽曲が著作物として公表されている(あるいは公表されることが確定している)こと。

出版者としての場合
過去1年以内に、第三者によって、日本国内で管理楽曲の著作物が公表されている(あるいは公表されることが確定している)著作物について、著作権譲渡契約を代表出版者として結んでいること、あるいは公表されること。

作品公表実績の例
①大手メーカーなどを発売元として、全国発売のCD(ビデオ、DVDビデオなど)で管理著作物(管理楽曲)が使われている。
②インディ系販売会社を販売元として1,000枚以上のCDが販売され、著作物が使われている。
③大手出版社発行などの全国に流通する出版物で、著作物が使われている。
④第三者主催で、かつ、入場料を徴収する演奏会(JASRACの許諾を受けている)で著作物が使われている。
⑤NHKや民間放送のテレビラジオにおいて、著作物が使われている。

自分で出版管理をやると、出版に関するプロとのパイプは持っていなければいざという時に困ることもあります。たとえば実際に制作業務にたずさわる場合、だれかが横で「あなたのアルバムの収録曲を権利者の許可なくカバーすることはできませんね」と指摘してくれるとスムーズに仕事が進みます。

もちろんこれら選曲にあたっては、録音前にJASRACに電話して相談してみることができますが、もし録音が終了した後だったら“発売中止"となり、制作費がまったくの無駄、後の祭りになってしまうことが起こりかねません。
あなたがもしアーティストの有能なマネージャーであろうとする人であれば、出版社の人たちと同等の知識を得る勉強・努力が必要となります。

音楽著作権協会(JASRAC)に関するメモ
放送局からの利用曲報告
生演奏された楽曲は必ず全曲使用報告されている。
商業用レコード使用楽曲については、各放送局は3カ月に1回、1週間(7日間)の間の利用曲全曲をJASRACに報告する。BGMについてはこの期間中の利用曲のみ報告される。

この報告リストに載ってこない利用曲について、音楽出版社がJASRACに分配調査依頼書を提出した場合は、JASRACが調査し使用されたことを確認の上、カウントする。

センサス方式
生演奏と映画の放送については、使用したすべての楽曲について1カ月ごとにまとめて翌月末日までにJASRACに報告する。

サンプリング方式
民放のテレビの場合、3カ月に1回の割合で「著作権週間」をJASRACが設定し、この期間の使用楽曲については放送局が細かくチェックしJASRACに報告。JASRACはこのサンプリングデータおよび「センサス方式」に基づいて得られた報告データにより、「ブランケット方式」で1年に1回集金された使用料金(放送料収入の1.5%分)を各権利者に分配する。
「通常」「テーマ」「背景」
「通常」…1点(歌番など)
「テーマ」…16分の1点(ただし1番組中何回使用されても16分の1点としてカウント)
「背景」…4分の1点(ただしNHKの背景は4分の3点)
さらにこれらの点が各TV曲のウエイト・ランキング(類)に乗じられる。
1類(58点)… NTR TBS、全国ABS、CX
2類(22点)…テレビ東京、毎日放送、朝日放送、読売テレビ放送、関西テレビ放送
メインの歌番組で全国ネットであれば170点くらいとなる。
曲数カウントについては5分を越えると2曲分にカウント。

演奏等
①上演形式による演奏
オペラ……入場料総額の6%(プラス消費税相当額)
ミュージカル・バレエ……入場料総額の4%(プラス消費税相当額)
②演奏会における演奏
純音楽…… 1曲1回5分までごとの使用料が定員・入場料に対応して細かく規定されている。

著作者・音楽出版社の自己使用
作家が利用開発のために入場料などの対価を取らずに自分の作品を使用
するときには、事前に書面でJASRACおよび関係権利者の承諾を得て、自己使用することができる(第11条1項1号)。

出版社が利用開発のためにインターネット上で対価を取らずに、かつ、技術的保護手段を講じて自社作品を使用するときには、事前に書面でJASRACおよび関係権利者の承諾を得て、自己使用することができる
(第11条2項2号)。

分配
3カ月ごとに計算しJASRACに納められた放送使用料は、納入から6カ月ごと(180日以内)に出版者に分配される。
3ヵ月ごとに計算しJASRACに納められた有線放送使用料は、納金から12カ月ごと(365日以内)に出版者に分配される。

音楽出版社:JASRACとの信託契約
クリエイターである作家の作品をあずかり世の中に広めると言うのは簡単でも実践するとなかなか深いのが音楽出版の仕事です。
実際の出版社登録手続きでは、まずJASRACに電話し、自分の会社の定款を持って相談に行くことになります。

「会社の定款の中に“音楽楽曲の利用の開発"という条項がありませんね」と言われた場合は、自分の住んでいる地区の法務局に出向き定款の変更手続きをします。印紙3万円と作成した会社の議事録および書き直した定款を提出し、その数週間後にふたたびJASRACへ行くことになります。JASRACで教えてくれた必要書類を提出します。

音楽出版社とアーティスト
アーティストや作家からすると、出版社がなぜ必要なのかを考えてみる。
時期があると思います。周囲の人があなたに、「出版権はしっかり押さえておけ」とアドヴァイスをくれたりするかもしれません。その真意は何でしょう。

音楽出版社の仕事は、JASRACに楽曲を登録し管理するということ以外にもたくさんあります。ある楽曲の使用にあたってアーティスト、レコード会社、映画会社、TV番組制作会社、広告代理店などを常に押さえておくのが出版社の条件ともいえます。

出版社は、これらの楽曲使用者が楽曲を使用することによって、作家に適切なロイヤルティ支払いが発生するよう交渉します(利用の開発)。当然、不正あるいは無許可で使用されていないかをチェックします(権利の保護)。海外の出版社とサブ・パブリッシングの契約を交わし、海外で発生する印税を回収したりもします。これらを作家が自分ひとりでやるとしたらとても無理な話です。

これら作家の楽曲の販売促進と、楽曲使用から生じる印税の集金作業の手間賃、手数料として出版社は著作権収益の3分の1(残り3分の1が作詞家、3分の1が作曲家)を作家からもらうのが通例です。

メジャーの出版社には、放送局系(日音、フジパシフィック音楽出版、日本テレビ音楽など)、レコード会社系(ビクター音楽出版、コロムビア音楽出版など)、プロダクション系(ホリプロ、渡辺音楽出版など)などがあげられますが、それぞれが総合的に収益を上げられるように多くの部門を抱えています。

書類上の管理をするための部門(法務、著作権、印税管理など)に加え、曲利用を促す営業部門、作家の活動を助ける制作部門などがあります。世界的に見るとEMIとWamer/Chappelが、音楽出版社の中でも一番大きい会社組織です。「ハッピー・バースデー・トゥ・ユー」という歌がテレビラジオや映画で流れるたびに、出版社にお金が入る仕組みになっています。


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