1.カラオケをうまく歌うためには
最近の世界的なブームといわれる現象にカラオケがあります。
歌うことは肉体的な健康にも役立ちますし、精神的な気分転換やうさばらしの効果もあります。人間同士のコミュニケーションにもなり、よい点は多くありますからブームになる理由もわかります。しかしやりかたしだいで弊害もありますから注意してください。

声は健康のバロメーターといわれます。肉体的な疲労や病気があると、たとえそれが体の一部であっても声に表れます。また精神的、心理的な心配ごとがあったり、不安があったりすると、これまた声に反映します。声は体全体を楽器として使うものですから、全身の健康がまず基本です。
「よい声」づくりの要点をあげてみます。
①全身の健康と精神の安定
体力づくりと精神、心理面の健全。

②正しい姿勢
顔、顎、首、手、背すじ、腹、腰、足など、上半身のリラックスと下半身の安定を保つことによって、発声・呼吸に必要な機能を円滑にし、声の調整をしやすくする。

③正しい呼吸
首、脊椎、腰手、足など全身を利用しての呼吸法の会得。

④上半身のリラックス
顔、舌、頚部肩、手などを必要以上に緊張させない。舌根や声帯周辺に力が入りすぎると疲れやすく、喉頭機能共鳴腔調節にも悪影響を与えます。→声帯や声を出すメカニズムは複雑なようで簡単だった

⑤共鳴腔をうまく利用する
喉頭室、喉頭蓋、舌、軟口蓋、口唇、口腔などの形と動き、鼻咽腔閉鎖機能、鼻腔共鳴など、共鳴場所のポジションをうまくつかむこと。よく響く声、よく通る声をつくるためには共鳴効果の活用のしかたが大切です。

⑥よい環境を選ぶ
自分の好きな声、共感する歌を選ぶのもうまく歌うコツです。好きな歌というのは自分が歌いたくなる歌ということで、自分の声域にも無理がなく、メロディや雰囲気、歌詞の内容にも共感できる歌ならば、欲の心を充分につかみ、よい声で歌う助けになります。

⑦歌の種類を選ぶ
声を出す部屋の温度、湿度、騒音、ほこり、タバコなど、のどを痛める周囲の環境にも充分注意しましょう。冷房や暖房、乾燥した部屋は特に有害です。→のどや声の調子を悪くさせないためにできる対策のまとめ

⑧声を出す(歌う)時間と休憩時間に注意する
長時間発声を続けるとのどを痛めます。だいたい1回に15分まで。休憩の時間を充分にとる。1日の総量でも1時間程度に。このほかに、これまで各項目で述べた具体的注意事項を参考にして歌ってください。



2.よい声づくりのポイントは2つ
よい声をつくりだすために私たちがしなければならないことは大ざっぱにいえば、
①発声器官の訓練
②全身の鍛錬です。


発声器官の訓練とは、高い声、低い声の出しかた、呼吸法などの訓練です。手足を動かすように意識下で自由にコントロールできにくいことと、筋肉や軟骨などが複雑に入りまじっているために、特定の筋肉を別々に訓練したり鍛えることができないのです。

中国の鍼や灸のように、ある一部の筋肉を治療するとほかの一部の筋肉が治るというものでもありません。たとえば、首の周囲の筋肉をマッサージしたり鍛えたとしても、この筋肉は声帯を動かすことに直接タッチしていないため、効果はないのです。

声帯を動かすのは軟骨の中の筋肉です。声帯周辺には横筋とか内筋といった筋肉が直接声帯に関与していますが、これも単独行動をとっているわけではありません。呼吸の際にも、横隔膜のほかに胸筋、背筋、腹筋が重要な役割を果たします。

要するに、発声器官と関係の深いところから間接的に鍛えるわけですから、全身的なトレーニングが必要なのです。声づくりは、まず体力づくりから始まるといってもいいのです。

部分的な訓練、たとえば胸囲を増やすためにボディビルだけをやってもダメですし、また腹筋を強くするため、ボクシングの選手と同じトレーニングをしても効果は少ないと思います。
部分よりも体全体を考えたトレーニングのほうがいいと思います。

日本でもヴォイス・トレーナーと自称するひとびとは多いのですが、あくまで自称であって、公認された資格としてのヴォイス・トレーナーは日本にまだありません。ヴォイス・トレーナーを養成する学校もないし、一定の養成コースで学んだあと、国家試験や公式の検定試験制度などもないからです。
これは日本でもできるだけ早期に確立して、義務教育レベルから日本語教育の中に組み込むべきです。
現在日本では音楽大学にすら「発声」という実技の教科もないし、「発声」を専門に教える教師も一人もおりません。すべて歌の教師の自由に任されているだけです。発声の前段階となる呼吸法にしても、今のところ世界的に各種の呼吸法が乱立しているだけです。


「歌は心である」と、フランスの有名な作曲家は述べています。
歌を歌う場合、うまい、へた、ということがすぐ問題になります。しかし声がよいからといって、歌がうまいとは限りません。

音程が狂っていても、声が悪くても、とことん自分の感情をこめて歌うひとの歌は、それなりにひとの心を打ち、うまく聞こえるものです。

歌は心の表現なのです。だから歌う場合、歌詞の心をつかみ、その心を歌うことが、うまく聞かせる大切なポイントです。若い歌手がしコーティングするようなときに最も注意されている点は、歌の内容です。別れの歌なら、別れのときの気持ちはどうなのか。別れを色にたとえれば、何色なのか…といったディスカッションを、徹底的にするそうです。

都はるみさんなど、うまいプロ歌手の歌う表情を見ていますと、ときおり頬に涙さえ流し、感きわまったように歌っています。まるで、今自分が恋人にふられ、その悲しみに泣きくずれているような…。俗に森繁節といわれる森繁久彌さんの歌は、必ずしもうまいとはいえないかもしれません。

しかし、彼の歌には感情移入があふれていて、そのしみじみとした歌は聞く者の心にしみわたります。ですから、あなたが声に自信がない、歌がへただという理由で、ひと前で歌を歌いたがらないのは間違いなのです。なにもプロ歌手ではないのですから、自分の歌、自分の魅力を100%発揮すればよいのです。

だれだって思い出の歌というものがあるでしょう。人生の節目、節目に聞いた思い出の歌、それを持ち歌にすればいいのです。

そうした人生の思い出を秘めた持ち歌は、だれでもお風呂場やひとり歩きのときなど、こっそりと、何十回、何百回となく口ずさんでいるものです。思い出深い歌は、そのとき自分がめぐりあった情景を頭に描くことができ、感情移入がしやすいでしょう。

昔、恋人からプロポーズされた喫茶店で流れていた歌。その歌を聞くたびに、そのときの感情がよみがえってくるはずです。その感情を歌に託し、心をこめて歌えば、多少音程が狂っていても、かすれ声であっても、きっとひとの心を打つはずです。

妙に意識してうまく歌おうと思ったり、プロ歌手の形やテクニックだけを真似て歌おうと思うから、アラが見えてしまうのです。へたでもいい、とにかく心をこめて歌おうと覚悟さえすれば、自然と緊張もほぐれて、リラックスして歌えます。

酒場で一杯入っているような場合、意外とうまく歌えたな、ということがあるのも、アルコールのおかげでリラックスできたからなのです。
歌を歌うときなどに、何気なく声を出していませんか。歌に合わせて声を使い分けると、もっと歌は上手に聞こえます。そこで、声を使い分けるためのコツを紹介します。

「声色」という言葉があります。声の調子や音のことなどを指しますが、字でわかるように、声には色があると考えてみてください。そこで、まず自分の出せる声に、ひとつひとつ色をつけてみましょう。

たとえば明るい声なら赤、柔らかい声ならオレンジ、といった感じです。あらかじめ自分の声と色を結びつけておけば、「この歌は赤い声で歌おう」とか「今回はピンクの声で」と、歌によって声をあらかじめ決めて、使い分けることができるわけです。

例として色と声の関係を載せてみました。ちょっとした考え方のコツですが、効果は抜群。慣れれば、思うままに声をあやつれるようになるはずです。

赤 明るい声、張りのある声
緑 やさしい声、ソフトな声
青 すんだ声、さわやかな声
黄 元気な声、はっきりとした声
紫 ゆったりした声、癒しの声
ピンク 落ち着いた声、甘い声
オレンジ 柔らかい声、温かみのある声


声を出すとき、アクセント(どこを強く発音するか)はとても大事です。同じ大きさの声でも、アクセントしだいで聞く人の印象はまったく違ってきます。

明るく大きな声に聞こえるためには、最初の一語目から大声で発音しないこと。 二語目により大きな声を出すように意識するのがコツです。

たとえば「おはようございます」というとき、「お」ではなく二語目「は」を大きく発音してみましょう。「お」をいちばん大きく発音すると、次第に声が小さくなっていく印象を与えてしまいます。また、最初から大声を出そうと意識しすぎることで、声が上ずってしまうかもしれません。

「お」よりも「は」を大きく発音すれば、全体的に声が大きく聞こえるうえ、言葉の響きもより明るくなり、非常に聞き取りやすい発音になるはずです。

「こんにちは!」というときにも同様。「こ」より「ん」を意識することで、より元気のいい印象になります。歌を歌うときはもちろん、人前で話すときなどに、このテクニックをぜひ試してください。


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