カラオケボックス
カラオケが巨大産業に発達したのは、この形態が出現してからのことです。 カップルで、気の合った仲間どうしで、はては1人で、などさまざまな利用の仕方が考えられ、その客層も中学生・高校生から学生、会社の同僚、昼間ヒマをもてあましている主婦連など、実にさまざまです。

これは余談ですが、カラオケをせずに、商談や仕事の打合せなどをボックスでする人もいるそうです。完全な密室になりますので、膝をつきあわせて話をしたいときなどには、もってこいの場所だというのが理由のようです。

カラオケボックスの店舗数は、89年には2600店だったのが、96年には1万3500店(推定)と、5倍以上に膨れ上がっています。バブルが崩壊して外食店が伸び悩むなか、厨房施設もいらず、人件費もそれほどかからず、狭い面積で営業できるカラオケボックスは、もってこいの業種だったのです。賃貸ビルにテナントがなかなか入らないという最近の傾向からすれば、賃貸料も下がっている今は「カラオケボックス様さま」といったところでしょう。

カラオケボックスは個人経営の店ももちろんありますが、チェーン展開をしている店が増えてきました。有名なのはカラオケのハードとソフトの供給元でもある第一興商が展開する「ビッグ・エコー」、カミ・ハレスの「ドレミファクラブ」などがあります。 また、駅の構内に付設されたり、シティホテルの中でボックス営業をしたりと、店舗の形もさまざまです。

ボックスでは今や、通信カラオケの導入率が90パーセントを超えています。 通信カラオケに人気が集まるのは、曲のカタログ数が豊富で、機能も多彩だからです。 →通信カラオケの詳しい説明<

カラオケボックスの料金は、時間帯と部屋の大きさ、平日の昼間などは料金をかなり値下げしていて、女子高生や主婦が詰めかけます。女子高生などは、学校帰りにボックスに寄って、昼間からフィーバーしています。

照明などは派手な色付きのライトがあることもままにありますが、ほとんどの部屋にあるのがライトの明るさを調節できるツマミです。最高に明るくしたときより少し暗くしてから歌にとりかかる、というマメな人もいます。

カラオケボックスの大きな特徴として、機械の操作を客が自分でおこなうということが挙げられます。部屋に案内されると、リモコンを渡されて、 「リモコンの操作はおわかりですか?」
と聞かれたことがある方もいるのではないでしょうか。

以前は部屋に通されてから曲を選ぶ前に、まず硬貨を入れなければなりませんでした。 1曲100円程度で、その都度かかるのです。 今は歌った曲数にかかわらず、部屋代のみの料金設定になっているので、いちいちお金を入れる機械にはほとんどお目にかかりません。

曲を選ぶには、曲目リストに書かれた曲の番号をリモコンで押して、機械本体に送信するだけですから簡単です。が、たまにマイクからの歌声と、カラオケの音とのバランスがよくないときがあって、これを調節するには機械本体のツマミをいじらなければなりません。

クラブ・スナック系
ここでのカラオケの役割は、夜の社交界に華をそえることです。 ホステスが脇について、くつろいだ話をして、タバコをくわえようものなら横からサッとライターが出てきたり、接待の席ならば相手を上機嫌にさせるべくいろいろ画策したり実にさまざまな思いが交錯する場所です。

ただ、長い時間ずっと、人間を相手にいろいろ話をしたりあちこち気を回したりしていると、ホステスだってお客だって気疲れしちゃったりもするものです。そこで威力を発揮するのがカラオケという装置です。

なにしろ、ただ歌ってりゃいいんですから。ホステスだって、お客の歌を聴いてりゃいいんですから。たまには合いの手を入れてやったり、「上手ねえ」なんて感想を述べてやったりしてりゃいいだけのものです。

映像もあるし、それを見ていれば手持ち無沙汰にもなりません。カラオケの映像を見てそれを、ネタにして話せばいい、なんていう効果もあります。 もともと関係ない人どうしを結び付ける役割も果たすカラオケ、これからもオジサンの強い味方になってくれるはずです。ストレスでお悩みの方、せいぜい熱唱してすっきり発散してください。

ママやホステスが客からリクエストに応じます。機械を操作するのは店のマスターでしょうか。とにかくお客は機械に指1本触れずに済みます。 ただこの種のお店の欠点は、他のお客が迷惑に思っている(可能性が高い)ことです。

これらのお店は密室性を売りにしていますので、ホステスとお客との間でなされる会話はコソコソとした内輪話だったりするものです。ここに大衆性バツグンのカラオケが聞こえてきたりしたら、ひそひそ話もできず、場が萎えるというものです。

カラオケで大盛り上がりすることはあまりありません。ましてや他の客との交流が深まるなんてことは考えられません。 でもお気に入りのホステスとデュエットしたりして、お近づきのチャンスを手に入れることもできるわけです。

ステージ付き飲み屋!
お店側が、カラオケが歌えることを売り物にしています。客も当然、歌いに来るわけです。また、客の要望が、シビアなこの形態のお店では、通信カラオケを導入している店も少なくありません。 この種類のなかでもジャンル分けができますので、挙げておきます。
①ステージは立派、見せ物性が高い、歌声喫茶的な共同体ができている
②ステージは手狭、若者のコンパに活用する
③健康ランドの大広間、ステージは立派

大きく分けて3タイプあります。それぞれを見ていきましょう。 ①はカラオケ好きな中年以上の男女が群れている感じです。この種のお店にはなんと、飲み物食べ物が持ち込み自由で、入場料とリクエスト料金だけで利益を得ているところもあるのです。

客は常連がほとんどで、段取りも要領も心得ています。客のキャパシティはギューギューに詰めて座っても40人ほどが限界です。この人たちがみんなカラオケを歌いに来てるわけですから、リクエストをしてから自分が歌う順番になるまで2時間以上かかる、なんてことが当たり前です。まさに客全員が歌いたくてウズウズしているのです。

そんな平常でない精神状態でいるのですから、カラオケを歌った人は、大喝采を浴びます。歌う人も聴いてる人もハイになることがおわかりいただけると思います。

もちろん歌っている人以外の客がおとなしく聞き入っているかといえば、そんなことがあるはずもなく、カラオケの映像を肴に酒を飲んで、世間話をしていたりします。 ステージが立派なら、舞台装置も立派なもんです。スポットライト、さまざまな色の照明、ミラーポールは当たり前。なかにはお望みとあらばスモークをたくところまであるほどです。

中年以上の客が多いので、歌われるのはやはり演歌がメインです。共同体的な雰囲気がありますので、いきなりポップスを歌いはじめると、ブーイングは起こらないまでも、ちょっとしらけるかもしれません。まあ若者たちだけではまず入って行けないでしょうが。気のいいオジサンオバサンの世界です。

②は居酒屋機能とステージがドッキングした形のお店です。 価格帯もいささか安めに設定されています。ドリンク飲み放題でおつまみも用意されて、2時間で2千円、などお手軽な値段が多いようです。 こちらはどちらかと言えば若者向けです。コンパなどで利用することが多く、お店の内装は比較的オシャレな雰囲気にしてあります。

①に比べると客もだいぶ冷静です。また全員が全員、カラオケをしたがっているわけでもなく、あくまでコンパの延長線上でとらえている人が多いのです。若者向けですので、歌われる曲もロック・ポップスなど流行りものがメインでしょう。

③はまさに、サウナやラドン風呂に浸かったあとの時間で一発やるか、という具合です。健康ランドにはよく演歌歌手の営業が入ることもあり、スペースを確保した広いステージが用意されています。

ここも1曲200円か300円程度でリクエストを受け付けており、歌いたい人がステージに出ていって歌うというものです。

形式的には①に近いのですが、ここの客はただ休憩しているだけの人もいて、①のような熱狂的な盛り上がりとまではいきません。浴衣を着て寝そべったり、食事をオーダーして食べたりと、カラオケの拘束力はここでは通用しません。そして何より、客は知らない人の集まりですから、簡単に熱狂できるわけもありません。

しかし日頃からカラオケを歌い込んでいる人にとっては、またとない発表の機会とあって、積極的に歌うようです。特に、家庭用カラオケで鍛練を積んでいる方々は、知らない人に自分の歌唱を見てもらえる、このような機会を有効に活用します。

公衆の面前で歌う(まさに公衆浴場ですから)ことが快感になってしまった人は、健康ランドに通いつめるようです。健康ランドを次々と渡り歩いて、初めての土地でのカラオケに挑戦している夫婦もいるほどです。

その場に居合わせる人はさまざまですが、歌われる曲はここでも概して演歌です。このように立派なステージでは演歌が歌われやすい、という法則のようなものが見えてきます。ステージで歌うというスタイルは、演歌歌手のリサイタルを模してできあがっているせいか、流行りのロックやポップスを歌うシチュエーションとしては適していないのでしょう。ゆったり構えて堂々と歌う、この醍醐味はまさに演歌のものです。

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