インディ・レーベルの契約や商標登録とアーティストの活動
1.インディ・レーベルとの契約や商標登録
インディ盤発売会社との契約
メジャーのアーティスト契約より10%近く高い原盤印税が設定されるのが通例です。原盤はアーティストが持ちこむスタイルが多いのですが、インディの会社がすべて負担する場合もあります。

マーケティングやプロモートについて、アーティストおよび原盤あるいはインディ会社そのものに力があればあるほど、高い印税を要求できることになります。インディ会社はアーティスト・ロイヤルティの支払い責任を持ちます。

メジャーの場合でしたら月100万円の契約金が期待できますが、インディではまずありえません(ごく一部のすでにメジャー・アーティストを抱えているインディは別です)。ですから売れた場合のロイヤルティは、高いものでなければバランスが取れないと考えてください。

またレーベルのすべての所属アーティストにメジャー・レコード会社が関心を持った場合(たとえば有カプロデューサーがすべてのアーティストを手がけているような場合)、あるいはインディ会社がいくつかの売れ線アーティストをかかえている場合は、委託契約は1アーティスト作品のみならずそのレーベルの全カタログ・アーティストが対象となる場合もあります。

収益分配型のディール
メジャー・レコード会社が製造と商品管理および販売行為のみを行い、インディにそれらの費用を請求し、さらに収益のあるパーセンテージを請求する場合があります。そこそこの売上が確保できそうといった種類の作品であれば、インディにとっては自分で製造した商品をメジャーにとりあえず預けて販売してもらうほうが好都合な取引形態となりますが、相当程度成功しそうな作品で、大きな販売促進活動が必要となった場合は、この収益配分型のディールが好ましくなります。

直接販売取引
てっとり早く収入を確実にすることをもくろむなら、大手の卸業者に直接売ってしまう手もあります。たとえば2,000円の商品を、卸価格の900円で全部売ってしまう取引です。この場合インディ会社が負担するのは、製造費、オーバーヘッド(家賃、リース代、税、保険、修理代などの運用費)、アーティスト・ロイヤルティ、作家と出版社へのメカニカル・ロイヤルティ(著作権印税)、宣伝販売経費そのほかとなります。そして卸業者からもらった金額から、それらを全部差し引いたものが利益となります。


2.レーベル名の商標登録
すでに販売先の会社が決まっているとしますと、次にあなたの作品をなんという名前のレーベルから発売するか、ということが問題になります。
通常は大きなレコード店のコンピュータでチェックし、同じまたは類似のレーベルがあれば自分のレーベル名を再考するということになります。

ただここでちょっと深読みしてビジネスとしての展開を考えるならば「商標登録」の問題が出てきます。これはマーチャンダイジング展開を想定したときにも大切な要件となりますし、マーケットで成功したアーティストがカスタム・レーベルを立ち上げるときは必ず必要となる問題です。

レーベルの「商標登録」にあたってのポイント
①商標登録は特許庁の管轄で行われる。
②登録する商品または業種によって34分類に分けられている。
③CD・レコードは第28分類に属する。
④CD用の音楽レーベルを調査(類似商標をチェック)・出願(特許庁に登録を申請)・登録完了までに約10カ月から12ヵ月を要する。
⑤登録有効期間は10年間または5年間で、期間終了前に10年間または5年間の更新手続きが可能となる。
⑥特許庁に支払われる総額は1分類1件10年有効で87,000円。
⑦弁理士の手数料が10万円から20万円。
⑧仮にスポーツ用品とファッション用品を含む第20分類も追加で登録する場合は、単純にいうと総額20から30万円が必要になると考えてよい。
⑨メジャー・レコード会社と契約していれば、その会社内のしかるべき担当者が弁理士の事務所に依頼して、類似商標のチェックあるいは登録手続きをしてくれる。
⑩インディ系のレーベルであれば、弁理士に直接依頼して登録調査・手続きをしてもらう。
⑪もちろんインディのパーソナル・レーベルであれば、こうした手続き一切を特許庁に自分で足を運んで行うことも可能(この場合音楽レーベル商標登録は87,000円で完了できるがたいへんそう。
⑫仮にこのレーベルが広く世に知られることになったあかつきに、メジャーがこのレーベルを使用して音源を発売したいとなれば、あなたの会社(あるいはあなたの関係会社)からそのメジャー会社に使用権を高額で売却することも可能性として考えられる。
⑬商標登録に伴うレーベル・ロゴのデザインは出願時に提出する。

3.インディ・レーベルの立ち上げとメリット、デメリット
これだけインディ・ブームが起きてくると、インディ・レーベルをあなた自身が立ち上げて、限られた販売ルートで流通させることも考えても良い状況になってきました。あなたが発売元になるわけです。

メリット
①クリエティヴイテイに関する部分で自由に、純粋に自分の才能を発揮できます(船頭多くして……良い作品はできません)。
②1枚売れたときの儲けがより大きくなります。損益計算において事業維持費の経費比率が、インディ会社の方がメジャー・レコード会社より圧倒的に小さい。製造費についても最も安い製造業者を選んだり、自前でジャケット・デザインを行う、レコード店に置いてもらう、個人の注文に応えて自分で発送するなど「自前」がポイントとなります。
③アーティスト・ロイヤルティに限らず著作権も含めて、アーティストおよびソングライターに手渡される間の経路がレコード店、レコード会社、レコード協会、JASRACだったりする中間マージンによる搾取を避ける方法を選択することができます。→JASRACについての詳しい説明

デメリット
①宣伝、特に全国展開のパブリシテイに関しての、レコード会社の力が利用できません。
②法務、契約、音楽出版などについて、レコード会社に相談できません。
③全国展開の販促活動、特にお店でのPOP展開ができません。
④レコード店からの返品に歯止めがききません。

Hi―Standardの関係会社あたりが一番詳しいのかもしれませんが、「純粋に自分の音楽表現を追究したい。やればやっただけの見返りが欲しい」という点からは、インディは最高の形態です。

「自分は成功したい。メジャーの契約アーティストになりたい。紅白にも出たい。世界の市場も狙いたい」という別の純粋さを大切にする人は、メジャーとのディールを避けるわけにはいかないでしょう。

J―POPの主軸となっているアーティストの多くも、インディからの発売を経て現在に至っています。音楽が素晴らしければ、前向きにアーティスト活動を行い、前向きにプロモート活動をすれば、音楽ファンそして音楽業界はあなたを認めざるをえないと思ってよいでしょう。

メジャー・スタートするためには、最低限のマーケット価値があるということが前提となります。またメジャーであり続けるためにも、最低限の売上実績がレコード会社からアーティスト側に求められます。

実際耳にした例からすると、ある演歌系アーティストの3人組グループが2001年に発売したCDが、2002年に全国発売になったというものがありました。地域発売したカセット8,000本を売るのを条件に、11月にまず自主制作版として新譜発売し、約3カ月の間自分たちで土曜、日曜をフルに使ってローカル・キャンペーンを繰り返し、遂に8,000本を売り上げ、晴れて2月に全国発売に漕ぎ着けたという話でした。あるポップス系ガール・グループのケースでは、メジャー会社の「5万枚売れないアーティストの契約は更新しない」という基準によって契約更新されず、フリー契約になったといいます。

単純にアーティスト側から見てインディでは利益を回収不可能、言い換えればメジャーと契約しなければビジネス的に問題が生じる売上枚数は、アルバムで20,000枚というのがわたしの持論となっています。メジャー・レコード会社の立場から言えば、20,000枚売れるアーティストなら商売になるともいえます。

またインディでもメジャーと同様の宣伝・販売手法がとれるお金と人材が備わっていれば、40万枚売ることも可能です。実際にはほとんどのミュージシャンが、こうしたヒトとお金のバックを持っていません。
「メジャーデビュー」こそが、プロ・ミュージシャンの証しのようになっているわけです。


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