アーティストをとりまくスタッフを集める
あなたの仕事と能力を最大限に引き出すプロたちについて
中心となるスタッフ
1 パーソナル・マネージャー
2弁護士
3ビジネス・マネージャー
4エージェント
5グルーピー


ビジネス哲学
いくつかの事実をしっかりと見据えていただきたいのだ。
1 あなたはビジネスなのである
たとえその才能がクリエイティヴなものであったとしても、年に数百万ドルものお金を稼ぐ能力があれば、自分のことをビジネスと考えなければならない。

2.大方のアーティストはビジネスが好きではない
ビジネスの話となると、信じられないくらい手際よく抜け目なくなるアーティストもいる。しかし、そういった人々は少数派で、彼ら自身、たとえどんなにビジネスが好きでその能力に長けていたとしても、音楽を作ったり演奏することへの愛情や能力の方が遥かに上であることは認めている。つまり、たとえ自分のビジネスがうまく処理できたとしても、そのことにとらわれるのは効率的な時間の使い方とは言えない。

3.成功すれば多くの失敗が忘れられてしまう
レコード作りだろうとなんだろうと、これはどんなビジネスにも当てはまることだ。もし成功すれば、時期が悪ければ破産しかねないほどいい加減なことをやっていても、大丈夫だったりする。たとえば、古くからの友入みんなを社員として雇い入れたり、収入に結びつかないようなものをどっさり買い込んだり(家、ジェット機、荒れ地、その他維持費がかかるようなもの) 、合法、違法を含めてさまざまなものにのめり込んだりすると、収入がちょっと落ち込んだだけで、いともたやすく致命傷を負ってしまうのである。金を儲けるには、稼ぐ、金を増やすより、余分な支出を切り詰める方が簡単なのだ。だから、やるべきことは今やっておくことである。
4. 自分のキャリアには限界がある
どうか気を悪くしないでもらいたい。“限界”といっても、1年の場合もあれば30年の場合もありとさまざまだが、いずれにしろ限界はくるのだ。他の仕事であれば45年間、プロとしての生活を送ることを考えることもできるが、ミュージック・ビジネスのエンターテイナーの場合、実質上ほとんど不可能である。老いぼれロック・スターが日銭を稼ぎながら各地を転々とする、ノスタルジックな演奏旅行というのが関の山。だから45年分を、ほんの数年で一気に稼ぐことに集中するのだ。そうすれば、きっとこのふたつのことを経験するだろう。

(a) 自分の稼いだお金がそれほど多いものではないように思えてくる。
そして、(b) このお金で残りの人生を持たせていかなければならないのかもしれない、と悟る。

もちろん、健全に長く仕事を続けていくことも可能だが、やっていくならば注意力と自己管理が要求される。こういうのは急激に減少していくものである。どんなに優れたエンターテイナーにだってスランプはあり、長い間成功を続けていける人というのは本当にわずかだ。したがって、自分の人気はそれほど長く続かないだろうという前提で計画を立て、もしそれが実現できたなら望外の喜びとするのがベストだと思う。

将来も同じようなペースで稼げるかのようにお金を使っていくのは悲劇を招く元なのである。だが、もう二度と働かないで済むようにしようと考えていても、それで自分の好きな仕事を辞められるわけではない。決めつけるのではなく、自由に選べるようにしておくことだ。


パーソナルマネージャー
パーソナル・マネージャーは、アーティストがプロとしての人生を送る上で最も重要な人物になる。優れたパーソナル・マネージャーは、あなたの能力いっぱいにキャリアの範囲を広げてくれるし、悪いパーソナル・マネージャーにつくと、あっという間に忘れ去られた存在になってしまう。仕事がうまくいっている時は、パーソナル・マネージャーはゼネラル・マネージャーであり、会社の営業部長である。
マネージャーの仕事で最も重要なのは次のようなものだ。

1 、仕事上の重大な決断、たとえば契約するレコード会社を決めたり、音楽出版契約、どれだけの額を要求するか、などでアーティストを助ける、
2、 クリエイテイヴな作業、たとえばプロデューサーの選択、どの曲をレコーディングするかの決定、バンド・メンバーの採用、写真家の選択、などでアーティストを助ける。
3、会う人ごとにアーティストを大袈裟な言葉で売り込んで仕事を取り宣伝キャンペーンなどの調整でアーティストを助ける。
4、 スタッフ・チームを集め、その中心となって、アーティストに弁護士、ビジネス・マネージャー、エージェントらを紹介し、彼らの仕事を統括する。
5、エージェントと協力して最高の条件でプロモーターと契約し、コンサート・ツアーの計画を立て、ツアーのルートを決め、ビジネス・マネージャーと協力して予算案を立て、ツアーのロード・クルーを集め、ツアーを監督して、ツアー・マネージャーにすべてがスムーズに運ぶ
ようにさせる。
6、アーティストの宣伝計画を立てて、レコード会社を動かしてアーティストのレコード・キャンペーンをやらせ、アーティストのレコードが優先的に扱われるようにし、会社のやり方が悪い時は怒鳴りつけ、うまくやってる時は持ち上げたりなどする。
7、 コマーシャル出演、舞台・テレビなどへの出演、チャリティーなどの催しへの参加要請(お金の場合も顔見せの場合も) などの打診といった外からのアプローチとアーティストとの一般的な橋渡し役となり、アーティストが色よい返事をしなかった場合は代わりに頭を下げるが、アーティストがその決定を下したようには思わせない、などなど。


弁護士
ミュージック・ビジネスの世界における弁護士は、契約書に目を通したり、クライアントに法律に関するアドバイスをしたりするだけではない。デイールを創り上げたり、アーテイストのビジネス・ライフの形成にも大きく関わっているのである。

ミュージック・ビジネスでは、弁護士のスタイルというのははっきりと分かれている。メンバーの一員のようにバンドと一緒に“遊び回る”ようなのもいれば、もっと保守的でビジネスに徹しているのもいる。必ずしもいい弁護士とは言えないが交渉能力に長けた、力のあるブローカーないしはエージェントのようなタイプもいれば、弁護士としては優れているが大局観を見失いがちな人というのもいて、当然ながらその両極端の間には無数の弁護士がいるわけだ。

強いコネを持っている弁護士だったら、他の弁護士なら会えないような人たちにも会うことができるのは確かだ。弁護士に求める大きな要素のひとつは、この業界の中における人脈なのである。

コネが使えない場合があることも知っておかなければならない。誰が働きかけているかに関係なく、あるディールから得られるものは増えるものではない。もしレコード会社がアーティストの音楽を気に入らなければ、紹介した弁護士のために契約することはないのだ。レコード会社がアーティストに惚れ込んでしまったら、たとえ代理人がリチャード・ニクソンでも契約がとれるだろう。言い換えれば、真にコネ=影響力を持っているのはアーティスト自身の能力なのである。



ビジネスマネージャー
ビジネス・マネージャーは、アーティストのすべてのお金を扱うチーム・メンバーである。お金を集め、帳簿をつけ、請求書を支払い、投資をし、アーティストがきちんと税の申告しているか確認する、などのことを行なうのがビジネス・マネージャーだ。

よく聞いてほしい。カリフォルニア州では、ビジネス・マネージャーになるのに何の資格も必要ないということを知っていました? 常識的に考えれば会計士の資格ぐらいは要りそうだがこれも必要なく、州からライセンスを受ける必要もない。法技術的に見れば、投資のアドバイスをするビジネス・マネージャーは“投資顧問登録”が必要となる。しかし、こういうのはごく稀である。つまりアーティストは、自分同様にほとんど財務の勉強をしていない人間にお金を託すことだってあるわけだ。よく考えてみれば、これは非常に恐ろしいことである。

財務畑で成功する気があったならば、ミュージック・ビジネスの世界なんかに足は踏み入れなかったことだろう。数字に強かったら、一攫千金の道など歩まずに、奥まった部屋でお札を数えていたはずだ。あなたも、数字を見ただけで頭が痛くなるクチに違いない。我々には苦手な分野というのがあって、そういうことを毎日は自分でやる必要はないわけだが、その場合、ちゃんとした人を見極めて、それを任せなければならない。そういうわけだから、チーム・メンバーを選ぶには、自分でじっくり時間をかけ、ビジネス・マネージャーには特に慎重になるように強くお勧めする。

ビジネス・マネージャーにはまさにピンからキリまで、いろいろな種類がいるのだ。客のあしらい方やオフィスの様子など、ほんの些細なことでも彼らの実像を知る手がかりになるかもしれない。キリの方のやつはピカピカの中古車みたいに、表面は新しい塗装でごまかしているが、中身は錆びて腐りかけていたりすることもある。財務上の被害をもたらすのは、根っからの悪党か、あるいは何事も善意で当たるバカ正直なお人好しだ。


エージェント
ミュージック・ビジネスにおけるエージェントは、映画業界のエージェントとは大きく異なっている。映画業界のエージェントがブローカーとして映画産業を左右するほどの大きな影響力を持っているのに対して、音楽業界のエージェントは、ほとんどがライヴ出演(コンサート)の契約のみを扱っているのである。時として、音楽エージェントがコマーシャル、ツアーのスポンサーシップ、テレビの特別番組など他のところで関わることもあるが、レコードや曲作りに参加すること(それでお金をもらうこと)はない。つまり彼らは映画のエージェントほど大きな力を持った存在ではないのだ。でも、それだからエージェントは重要じゃないということでは決してない。彼らの役割は非常に重要であり、大きな影響を及ぼす。ただ、その影響の及ぶ範囲が限られているだけである。

期間
エージェントとの契約交渉における要点は以下のとおりである。
エージェントは3年もしくはそれ以上を要求してくるだろうが、アーティスト側としてはそれを1年にしておきたいところだ。短ければ短いほどいい。仕事がうまくいかない時は打ち切りやすいし、うまくいってる時は手数料を抑えられる。これをどのようにコントロールできるかは交渉の際のバーゲニング・パワー(力関係)によるだろう。もし1年以上の契約を讓るなら、最低レベルの収入が得られない場合に契約を解除できる権利を確保しておく必要がある。もし自分にそれなりの影響力があるなら、どんな書類にも一切サインしなくていい。しかし、エージェント側の方針との兼ね合いで、この態度も変わりうる。

エージェントの選択
パーソナル・マネージャーがいるなら、アーティストがエージェントと会う機会はごく限られている。ショーの時や、ツアー計画を立てる時に顔を合わせるくらいだろう。それ以外の時は、彼らはアーティストのパーソナル・マネージャーとやりとりをし、アーティストの弁護士やビジネス・マネージャーと接触することもずっと少ない。したがって、最終的な決定はアーティストが下さなければならないが、エージェント選びはまずマネージャーの手に委ねるのがいいだろう(エージェントとのやりとりは、ほとんどマネージャーが行なうのであるから)。
もしマネージャーがいないなら、エージェントは直接アーティストに報告することになる。この場合、エージェント選びの基準になるのはマネージャー選びと同じだ。

グループ
もしあなたがグループのメンバーなら、グループのメンバーにはソロ・アーティストにはない一連の問題があるのだ。それを見ていくことにしよう。

グループに提示されるレコード契約
グループのレコード契約の場合、ソロ・アーティストのレコーディング契約にはない項目がまるまるひとつ登端する。それは、グループがグループとして存続しなくなった時、またはグループ°の中のひとり(バンドの中心人物かただのメンバーか、その立場によって違うだろう)が、もう他のメンバーと一緒にやりたくないという状況になった時のためのものだ。

キー・メンバー
まず、ほとんどの契約では、ひとりのメンバーによる契約不履行はメンバー全員の契約不履行とみなす、と謳われているはずだ。つまりこれは、メンバーのひとりが他のメンバーと一緒にレコーディングしたくないと拒否すれば、グループ全体が契約不履行を犯すことを意味するのである。もし、これがリード・シンガーとか中心的なソングライターについて言っているのであれば、それほど無茶な条件とは思えないが、これが歌も歌わないし曲も書かない、どこに住んでるのかすら知らないようなパーカッショニストだと、いささか不合理に思える。

このわれらが友人たるパーカッショニストの問題を扱うような場合のために、アーティストの代理人は“キー・メンバー” という概念を思いついた。
このシステムのもとでは、ある特定の人間がキー・メンバーに指定される。もしキー・メンバーがバンドを離れたり契約不履行を犯せば、会社はそれをバンド全体の不履行とみなし、各種のオプションを行使することができるわけだ。他のメンバーの契約不履行ではそれができない。

これは、ぜひともこちらから要求しなければならない事柄だ。契約書にキー・メンバーの条項をあらかじめ入れている会社はない。それに、想像がつくと思うが、この条項を入れるとバンド分裂の元となると考えられている。キー・メンバーに指定されなかったメンバーが軽く扱われていると思われがちだからだ。とはいっても、見ればわかるが、キー・メンバーになることが必ずしもいいことばかりとは限らないのである。

グループを離れたメンバーに対する会社の権利
もしメンバーが(キー・メンバーでもそうでなくても)グループを離れた場合、会社は何ができるのか?
1 すべての会社は、もしメンバーがグループを離れても、会社はそのメンバーのソロとして(もちろん他のグループのメンバーとしてでも)の仕事に対するオプションを有する、と定めている。キー・メンバーのシステムを導入している場合でも、会社側は、誰であれ(キー・メンバー以外でも)離れていくメンバーをピックアップする権利を要求することがある。しかし先ほどのパーカッショニストのような、キー・メンバー以外の者までキープすることなど会社に何の関係があるのだと言いたい。

もし彼がグループを離れる決心をしたら、彼はレコード会社と契約を結ぶことができるが、キー・メンバーだとそうはいかない。しかし、キー・メンバーでないにもかかわらず、会社が彼をソロとしてピックアップする椎利を主張したとすれば、それも水の泡である。

2.会社は、残ったメンバーにグループを続けさせるオプションも有する。

3.会社は、これがもう契約したグループではないということで、残ったメンバーとの契約を破棄するオプションを有する。つまり、会社が残ったメンバーに対してオプションを行使しなければ契約終了ということである。キー・メンバーが離れただけで即この権利を行使できる
かどうか、確認しておく必要がある。

グループを離れたメンバーの契約
離れたメンバーのソロ契約期間は、グループの契約書に明示されており、ほとんどすべての場合、グループの契約より厳しいものになっている。レコード会社の立場からすれば、これは十分理解できることで、契約はグループとして結んだのであり、ソロとしての価値は未知数だということである。成功が決して保証されているわけではない。

グループを離れたものの、さっぱり当たらなかったという例はたくさんある(ソロになってから、グループの時よりも成功を収めた例もまた同様にたくさんある)。そのグループがかなりの大物であれば、ソロになった場合のロイヤルティもグループの時と同じか、それに近いものになることもあるが、アドバンスは必ず少なくなり、コミットする枚数もせいぜい1枚というのがほとんどである(デモだけの時だってある)。バーゲニング・パワーが増すにつれ、この条項についての交渉力も増していく。特にグループのメンバーがスターになるとか、以前にソロとしての経歴がある場合はそうだ。