認知症に音楽が与える効果とは?音楽療法のメリットや高齢者におすすめの曲を紹介
目次
認知症に音楽が与える効果とは?音楽療法のメリットやおすすめの曲を紹介
1.認知症ケアに音楽を取り入れる理由
認知症になると、記憶力や判断力などの認知機能が低下し、以前のように言葉で気持ちを伝えることが難しくなる場合があります。
しかし、音楽は脳の深い部分に働きかけるため、認知症の方とのコミュニケーションを生み出す大切なきっかけになります。
特に、若い頃に聴いた歌や思い出の曲は、長期間保存される「長期記憶」と結びついていることが多く、曲を聴くことで昔の出来事や家族との思い出が自然によみがえることがあります。
音楽には、
- 会話のきっかけを作る
- 不安や孤独感を和らげる
- 昔の記憶を呼び起こす
- 人との交流を増やす
- 生活に楽しみや目的を与える
といった効果が期待されています。
認知症ケアにおける音楽は、単なる娯楽ではなく、その人らしさを取り戻すための重要な手段のひとつなのです。
認知症ケアで期待できる音楽の効果
音楽を聴くことで記憶がよみがえる
認知症では新しい出来事を覚えることが難しくなる一方で、昔の記憶は比較的残りやすい特徴があります。そのため、若い頃に流行した歌や学生時代によく聴いた曲を流すことで、
当時の生活
家族との思い出
友人との出来事
季節の風景
などを思い出すきっかけになります。
例えば、昭和の歌謡曲や童謡、唱歌などは、高齢者にとって思い出と結びつきやすい音楽です。
「この歌を聴くと昔を思い出す」
という経験は、認知症の方に安心感や喜びを与えます。
歌うことで身体機能の維持につながる
歌うことは、楽しみながら身体を動かす活動でもあります。
声を出すことで、
- 呼吸機能の維持
- 発声能力の向上
- 飲み込む力(嚥下機能)の刺激
- 口周りの筋肉運動
につながります。
また、複数人で歌うことで一体感が生まれ、孤立感の軽減にも役立ちます。
認知症の方にとって「誰かと一緒に楽しむ時間」は、心の健康を保つうえでも大切です。
楽器演奏で脳と身体を刺激する
楽器演奏は、難しい技術がなくても参加できます。例えば、
鈴
タンバリン
カスタネット
太鼓
マラカス
などの簡単な楽器でも、音楽に合わせて身体を動かすことで脳への刺激になります。
「演奏する」という行動は、音を聴く・リズムを感じる・身体を動かすという複数の刺激を同時に行うため、楽しみながら活動量を増やすことができます。
2.認知症ケアにおける音楽の進め方
プローチのポイント生活背景の把握
音楽は人によって、好みや生活史における個人的意味があり、また情緒的なものです。一つの歌や曲が会話のきっかけとなり、人生を振り返る回想の手段にもなります。
生まれ育った時代の生活環境や生活習慣好みなどにより、若い頃親しんだ音楽今聴いても心和む音楽は、人によって異なります。そのため、個人の生活背景を把握し、それを活かすアプローチが必要となります。歌うことが好きか、楽器を使うことが好きか、踊ることやリズムをとりながら楽しむことが好きか、聴いているだけで十分か、また個人がよいのか、グループがよいのかなど、その場面や状況を考えて音楽を活用します。
また、人はいつも同じ状態ではないため、その時々に応じて柔軟に対応できることが必要です。予定外の状況にしばしば出会うことがありますが、生活背景を把握していることで、臨機応変の対応が可能となります。
年代別のアプローチ
認知症予防をはじめとした「介護予防」では、さまざまなプログラムが提供されています。介護予防の参加者は、年齢層の幅が広く、60代から積極的に参加していますが、60代の人と70~80代の人との生活歴時代背景は大きく異なります。
戦争を体験した世代、戦後の高度経済成長の時代、それぞれが生きてきた社会的環境の違いとともに、それぞれの時代を理解し、選曲アプローチを行うことを心がけることが必要です。また、受けた教育の違いや日本文化に対する思い入れ、生活習慣の違いなども把握します。
歌謡曲は、その時代を表現するものなので、認知症の人にとっては、記憶を呼び起こすために有効なのです。
さらに、年齢によりキー(曲の調子)の調整も必要です。高齢者では一つの曲を高音から低音まですべて歌うことは難しい場合が多く、個人差もありますが、歌いやすいキーの選択が必要となります。
リズムの重要性
音符が読めなくても、楽器が演奏できなくても、リズムを通して音や音楽を楽しむことができます。歌詞やメロディを知らないのに、聴いただけですぐに参加することができるのがリズムです。例えば、太鼓や鈴、カスタネット、タンバリン、マラカスなどのリズム楽器を使うことで、多くの人が参加することができます。メロディを知らなくても、リズムを模倣することで周囲と共感をもつことも可能です。
3.プログラムの進め方
プログラムのスタイル音楽プログラムはグループで取り組むことが多くあります。2~3人の小人数から、10人以上の大グループの場合もありますが、最近はその対象者を機能や障害別に分けるなど、小グループ化する傾向にあります。
グループでの取組みは、共有体験による喜びや達成感社会性の向上などの利点があります。一方、少人数や個人の場合は、個人の機能に応じて反応を引き出したり、応えたりすることができ、対象者にとっては自己表現や自主性を発揮しやすく、達成感などが得られやすくなります。
進める際の留意点
すべては選曲から始まります。アプローチのポイントで述べたように、認知症の人が安心して歌えるよう、なじみの歌を選曲するようにします。そして、それぞれのパートに分かれて練習し、次に各パート全員で一斉に合わせます。歌に慣れてきたら、歌いながら、リズムに合わせて楽器を演奏します。
具体的な進め方のポイントは次のとおりです。
①時代を代表するなじみの曲などを一緒に歌ってみる。
②曲にかかわる話題から、さらに次の曲を引き出す。
③一つの曲をヒントに、音楽的に発展させる方法を考える。
例えば、踊る、合奏する、ハーモニーをつけるなど。なお、継続的に実施するには、前回の復習を心がけるようにします。また、スタッフが個人の様子を記録しておき、次回の参考とすることが必要です。さらに、楽しい演奏ができたときの喜びを記録しておくことも大切ですので、録音・録画を定期的に行い、成果を大切に記録しておきましょう。
プログラムを進めるリーダーは、常に参加者から注目される存在です。リーダーの表情や態度雰囲気で、その場の空気が変わることもあります。リーダー自身が日頃から音楽を楽しみ、音楽に慣れ親しむことが必要です。
実践のための選曲
季節にちなんだ歌の例日本には四季があり、季節にちなんだ情緒豊かな曲が多い。特に認知症の人に対するアプローチでは、参加者の時代を踏まえて、昔覚えた曲やなじみの曲を選曲するとよい。
1月~2月
(睦月、如月)
1月1日・雪・たきび・雪の降る町を・お座敷小唄・まつの木小唄・冬景色・冬の夜・真白き富士の嶺・湯島の白梅・数え歌・神田川
3月~4月
(弥生、卯月)
うれしいひなまつり・早春賦、 どこかで春が、 春よ来い・春が来た、花・春の小川・蛍の光・仰げば尊し・贈る言葉・北国の春・さくらさくら・春の唄・花言葉の歌・荒城の月・朧月夜
5月~6月
(皐月、水無月)
茶摘み・こいのぼり・背くらべ・みかんの花咲く丘・からたちの花・知床旅情・あめふり・雨降りお月さん・めだかの学校・蛙の笛・かたつむり・ピクニック・並木の雨・線路はつづくよどこまでも
7月~8月
(文月、葉月)
たなばた・頁は来ぬ、夏の思い出・椰子の実・花笠音頭・ぐちなしの花・少年時代・海・われは海の子・浜辺の歌・琵琶湖周航の歌・青葉城恋歌・思い出の渚
9月~10月
(長月、神無月)
赤とんぼ・虫のこえ、ふるさと、村祭・十三夜・故郷の空・里の秋、 ちいさい秋みつけた・森へ行きましよう・箱根の山・湖畔の宿・宵待草・山小屋の灯
11月~12月
(霜月、師走)
もみじ・旅愁・通りゃんせ・学生時代・見上げてごらん夜の星を・聖夜力・ともしび・北帰行・お正月・いい湯だな、 湯の町エレジー・赤鼻のトナカイ・トロイ
通年ふるさと、あんたがたどこさ、夕やけこやけ
導入として「今日の歌」または「今月の歌」を使って日時を確認、季節を話題に声かけを行います。季節の歌やなじみのある曲を歌うことにより。その曲を歌っていた時代、友達家族などの記憶が呼び起こされるため、選曲はとても重要です。
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