声帯や声の健康を損なうポリープや発声障害にならないための対策
目次
- 1.声の健康を維持するため
- 2.カラオケポリープ
- 3.その他の病気や注意すべき点
1. 声の健康を維持するためには、根本的に声帯は湿度を保ち、濡れていなければなりません。これが基本概念です。→声帯や声を出すメカニズムは複雑なようで簡単だった
声帯は超高速で振動している臓器であるために、濡れていないと摩擦を起こしてしまうのです。適度に湿度を保つには「鼻呼吸」が理想的です。口呼吸では、乾いた空気がそのまま声帯を通過してしまうので、気をつけるとともに部屋の湿度管理やタバコの煙にも注意が必要です。
風邪をひくと鼻声になったりするように、体の異常を声で察知することは可能です。手が痛い、足が痛いというのは無理ですが、呼吸器官の異常はわかるかもしれません。
ただし、聴覚的訓練ができたひとでないとダメです。耳鼻咽喉科の医者で、いつも声帯を診察したり声を聞いている人だと、声を聞いただけで声帯にどんな変化が起こっているか、共鳴器官に異常があるか、など大ざっぱには想像できます。
なんらかの理由で発声の機能に異常があるのですが、発声するときに苦しがるなどの特徴があり、ほぼ、声でわかります。
声を出すということは、ほとんど全身の器官が多かれ少なかれかかわり合っているので、体のどこか一部に障害があっても、すぐ声に表れるのです。胃腸の具合が悪くても、強い声が出せなかったり、低い声になったりいろいろです。
話しを戻すと、声帯を適度な湿度に保つために、どうすればいいかといえば、まず簡単にできる方法としては「鼻呼吸」が望ましいのです。「口呼吸」だと、乾いた空気がそのまま声帯を通過してしまうので、声帯を乾燥させてしまいます。「鼻呼吸」であれば、鼻の中の粘膜から空気が加湿されて通ってきますから、声帯にとっては好ましいのです。
もちろん、部屋の湿度を考えるとか、声を使う仕事の人であれば、タバコの煙にも気をつけなければなりません。→歌うときも話すときと同じ自然な呼吸の仕方を意識する方法
近年のカラオケブームによって、カラオケが原因とみられる声帯のポリープが多くみられるようになりました。これを「カラオケポリープ」と命名して、声の健康維持を呼びかけています。
では、なぜカラオケで声帯にポリープが発生してしまうのでしょうか。その原因を探ってみましょう。
なぜポリープができるのか原因としては
〈原因1〉連続して歌い過ぎる
〈原因2〉環境の悪さ
〈原因3〉へたの横好き
以上のことが重なるとカラオケポリープの発病が高くなります。
回避方法
原因1
一度歌いだしたら止まらないという方には要注意です。とくにヒトカラもはやっているので、ついつい調子に乗って歌い過ぎてしまうので、適度なインターバルをとることを忘れないようにしましょう。
原因2
カラオケボックスに見られる、タバコの煙が充満したような換気の悪い密室です。さらにクーラーや暖房で室内の湿度が低くなると、最悪の環境になります。
原因3
自分のお気に入りの歌手を真似してうたいたがる人がよくなります。モノマネとまではいかなくても、誰かのような真似をするレベルでも注意が必要です。
発声には声帯の筋肉運動が伴うので、体操でいえばいきなりオリンピック選手の技を経験ゼロの素人がするようなものです。そんなことをすれば怪我をする可能性が高くなります。このようなことがカラオケポリープの原因となっているのです。
予防方法
カラオケ・ポリープの予防法はいたって簡単です。
原因となることの逆をすればよいだけです。
まずは連続して歌わないこと。カラオケで1曲歌った後に、席に戻って大声ではしゃいでしまっては歌っているのと同じこと、声帯の酷使には変わりありません。それを避けるためにも、さりげなく飴を口に入れればいいのです。そうすると喋れないし、喉も唾液の分泌が促されて潤います。
当然ですが、歌う場所の換気も頻繁に行ったほうがいいでしょう。
声の障害を原因別に見ますと、
①器質的な発声障害(声帯そのものに傷がある、腫れている、炎症で赤くなっているなど、具体的変化のあるもの)
急性喉頭炎
最も多く見られる症状で、程度によって違いますが、風邪による上気道炎が最も一般的です。
高い声が出なくなる、だみ声、しわがれ声となり、ひどくなると声が出なくなります。はじめは風邪のような状態で、分泌物も透明のものからだんだんと粘液性のものとなり、ウミのようになります。
炎症がのど全体に広がると、力ラカラに乾燥したようになったり、熱くなったりします。ときには、ものを飲み込むと痛みを感じます。
発病は急ですが、一般に軽いものが多く、治療すれば治るのも早いようです。
慢性喉頭炎
急性の喉頭炎がまだ完全に治らないうちに休養もせずにいるとか、無理な声の出しかたをつづけていたりするとなります。軽いうちはのどが疲れやすい程度。進むと、しわがれ声になったり声が出なくなることも…。
声帯出血
女性の生理時などに起こりやすく、声帯の片側あるいは両側から粘膜下出血。稀には男性にもあります。自律神経の異常によることもあるようですが、原因不明のことが多いようです。声はしわがれ声になり、ピッチは下がります。一度出血すると、習慣的になることが多いので注意。
声帯結節と声帯ポリープ
声帯結節は声帯のへりの一部にでき、手や足にできるまめやタコのようなもので、声門の閉鎖が不完全になります。声はすぐ疲れて、しわがれ声になってしまいます。
声帯ポリープも、多い症状。小さなキノコのようなものが、声帯の粘膜に発生します。結節と同様で、声帯が閉じにくくなり、隙間ができて、息がもれるようになります。ポリープはとらないと声もよくならないし、筋肉に負担がかかって、のどが疲れやすくなります。
歌手、アナウンサー、俳優、政治家、学校の先生、バスガイドといった声をよく使う職業のひとで、特にのどを詰めて発声するひと、絞りだすように演歌を歌うひとたちは、結節やポリープができやすいのが特徴です。
喉頭ガン
声帯やその周囲にできるガン。声帯にできた場合は声がまずしわがれます。しかし、その周囲にできた場合は声の変化もなく、のどにかたまりのあるような感じとか発声時の異物感、ものを飲み込むときの異物感、といったわずかな症状しか表れないことが多いので、発見が遅れがちです。
風邪の場合のかすれ声なら、せいぜい1週間から10日もすれば治ります。原因もなくかすれ声が数か月つづいたり、血タンが出たり、食べ物が通りにくい、などの症状があるときは早めに専門医に診てもらうことです。
マヒ
中枢とか末梢的な神経のマヒあるいは発声に必要な筋肉のマヒなどで、発声器官が活動しない症状。
②器質的な病気が認められなくても発声障害を起こすもの
声を使う職業のひとに多い音声衰弱症
おもな原因は声の乱用です。しかし、精神的、心理的要因もからみ合っていることが少なくありません。
歌手の歌声衰弱症。教師、僧侶、俳優牧師、政治家、電話交換手、アナウンサー、ガイド、車掌、呼び売り商人たちの、声を妨げる話話衰弱症。自衛官、体操教師など号令に起因する、号令衰弱症などもあります。
神経質なひとに多い心因性あるいは機能性発声障害
感情や情緒が不安定なひとがなりやすく、恐怖、驚き、苦悩などのショックで突然、声が出なくなります。声門を開けたり閉じたりするための筋肉の末梢の機能はなんでもないので、せきとか笑いなどの反射的な声は出ます。ヒステリー性の発声障害などはこの例です。
けいれん性発声障害
これも心因性ではありますが、神経機能が過緊張になるのが原因。ふだんしゃべっているときはなんでもないのですが、職業上、緊張して声を出そうとすると声が詰まったり、途切れたり、ひっかかって出なくなったりします。
弁論大会などで演壇に上がったとたんに声が出なくなったり、重要な商談で相手と応対しようとしたら声が出なくなるのも同じ。アナウンサー、電話交換手などでは、仕事のときだけに起こるケースです。
もの真似による声の障害
子どもがテレビなどの奇妙な声を真似ているうちに、本刈に似てしまうようなこと。親とか教師に似ることもあります。
学童きせい
学童の6~7%がかかるといわれ、比岐的多い病気
学校へ行きはじめた子どもが、大声を出したりはしゃぎすぎるなど、声の無理な使いすぎが原因。声帯にタコやまめのような結節ができていることが多いのですが、声を使わせないようにすれば自然と治ります。日ごろから無理な発声をさせない注意が必要。
タバコ
身体にとって悪影響であるのは誰でも知っていることでしょう。ニコチンの影響であるとか、がんを誘発するタールの問題などケミカルな影響がありますが、タバコの煙は100%乾燥しています。→カラオケでストレス解消させがん細胞を抑制させる方法
つまり湿度は0%です。その煙が声帯を通過してくるので、短時間に声帯の粘膜を乾燥させてしまうことになります。ですから、鼻からタバコを吸えばタバコの煙も加湿されるので、乾燥という問題は解決しますが、鼻からタバコを吸う人はなかなかいません。しかし、鼻の中にタールがこびりついて、発声時に空気の抜けが悪くなることは前述した通りです。
いずれにしても、喫煙は声や喉にとって、過酷な環境を強いることになるのは間違いありません。声帯だけではなく、喉の中でばい菌を排除する繊毛の働きも、湿度がなくなれば鈍くなります。
しかし、世の中には「鉄の喉」を持ったプロの歌手もいます。
いくらチェーンスモーキングを重ねていても全く声が衰えないという人も、ごく稀ながらいることはいます。そのことも、歌手になるためのひとつの才能なのかもしれません。
ただし、 一般のアマチュアが同じことを続けていれば、必ず喉を壊してしまいます。くれぐれも真似はしないように
アルコール
ではアルコールはどうでしょうか?声にとってはタバコと比較しても、決して悪い関係ではありません。むしろ少量のアルコールであればよいくらいなのです。
なぜかといえば、アルコールの摂取によって身体の分泌機能が活発化するので、喉頭に粘液が多量に分泌されオイルが増えるわけです。
ところが、さらにアルコール摂取量が増すと、アルコールの薬理作用として循環が盛んになってきます。すると、声帯が内出血を起こすので「腫瘤」タイプのポリープが発生しやすくなります。
適量と一口に言っても、個人差があるので、ぴったりと何cc以上とは断言できません。ただ「過ぎたるは及ばざるがごとし」ということです。ホドホドに。