1.声を出すのには体のさまざまな部分がかかわっていますが、自分だけでトレーニングできるのは、のど、舌、くちびる、あごです。そして声の「欠点」も、これらの部分の使い方のまずさ(またはヘタさ、不器用さ)によるものです。レッスンでは、これらのポイントをチェックして、上手な使い方をすることに重点をおきます。

ひとつだけ注意しておきます。このレッスンでは、これまでに習った呼吸法のことはわすれてください。

声を出すのには、上半身のほとんどがかかわっているといいました。とりわけ胸(肺)は、大きな共鳴箱のようなものです。豊かな朗々とした声は、正しい呼吸から生まれます。歌手や俳優などは、いい声を出すには正しい呼吸、すなわち「腹式呼吸」しなければならない、ということを聞いたことがあると思います。→腹式呼吸で歌が格段上達!できない人のための必ずできる練習方法

これまで発声のレッスンを受けたことのある人は、まっ先に呼吸法のトレーニングをやらされたでしょう。
発声に呼吸が大事である。それはほんとうです。

しかし、正しい呼吸法というのはじつにむずかしいものです。プロの歌手や俳優が、すべて正しい呼吸法をマスターしているでしょうか。オペラの歌手や訓練をつんだ俳優はべつとして、 一般の歌手、俳優、タレントといった人たちで呼吸法をマスターしているのはごく少数。呼吸法なんか気にもしてないという人が大部分でしょう。

呼吸法なんか知らなくたって、ちゃんとまともにセリフをしゃべったり歌ったりできます。

それなのに、歌を教える学校とか教室では、「〈正しい呼吸法〉が発声の土台です」とかいわれて、呼吸法のレッスンからはじめる。なんとなくもっともらしいから、みんな「正しい呼吸法」をマスターしようと必死になる。

しかし、呼吸を意識したとたんに、たいていの人は歌がヘタになる。それどころか 「正しい呼吸法」をやろうとすると、とんでもない病気にかかってしまう危険があります。

いざ声を出そうとすると、この「正しい呼吸」ということばが呪文のように頭にうかぶんですね。そして「正しい呼吸でしゃべらなければならない」と自分にプレッシャーをかける。

「正しい呼吸、正しい呼吸」と自分にいい聞かせているうちに、呼吸のことで頭がいっぱいになって、声を出すどころではなくなってしまう。

呼吸法というのは、熟練した発声について、長い時間かけて、基本からしっかり習わなければ身につくものではありません

いいかげんなトレーニングをすると、正しい呼吸は身につかなくて、かわりにこういう「呼吸ノイローゼ」みたいなものだけ獲得してしまうことになるのがオチ。

このノイローゼのおかげで歌がヘタになっているという人がいます。
「正しい呼吸」とか「腹式呼吸」など、あまり深く気にしないでください。



カラオケは、マイクロフォンにむかって歌い、電気信号化したその声とオーケストラの伴奏とをアンプで増幅、ミキシングしてスピーカーから流します。このシステムは、運動会などで使うマイク・アンプ・スピーカーの拡声器のシステムとはちょっと性質がちがいます。

どうちがうかというと、マイクはダイナミック・マイクロフォンというのを使っている。これはひじょうに感度がよく、小さな音も忠実にひろいます。アンプもカラオケ専用のアンプで、高音はよく通る声にします。また高音も低音もよく響かせます。→カラオケで自分の声を良く聞かせるマイクの正しい使い方を伝授

システムのこの性質を認識しておくことが、カラオケにおいてはとても大事。
カラオケがすごくうまい、という人が身近にいたら、その人がどんな歌い方をしているか、一度よく観察してみてください。

そして、もしできるなら、マイクの音声を切って、その歌を聞いてみてくださいそうすると、まずその人がけっして大きな声で歌っていないということに気づくでしょう。

そして、「歌う」というより「語る」あるいは「しゃべる」というのに近い歌い方をしているのがわかります。カラオケなしでは歌とも思えないような歌い方をしているんですね。しかし、カラオケにするとこれがすばらしくうまく聞こえる。

ようするにカラオケの使い方がうまいのです。
まず地声で歌う。地声は呼吸がらくで、余裕をもって自在な歌い方ができる。高い声、低い声がムリなく出せる。肉声では感じ取れないような抑揚や歌い回しを、マイクが忠実にひろって増幅する。すると、なんかポシャポシャした「しやべり」か「語り」のような、さえない感じさえする歌が、表情ゆたかなすばらしい歌に変身するのです。

地声で歌えるようになっても、 マイクを握ると、ともすれば以前の「歌う」声にもどってしまいがち。つまり呼吸が安定せず、のどに力が入り、リキんだ歌い方ですね。

とくにテンポが速く、伴奏がにぎやかな感じのものだと、 ついつられて「歌おう」としてしまいます。

練習で地声を出すことを身につけたら、地声の感覚がわかったら、ふだんのしゃべりも歌も地声で通すことです。身構えて歌わないことです。そうすれば確実にカラオケはうまくなります。



声帯も筋肉ですから、ある程度は鍛えることができます。
これは、トレーニングすることで音域を広げる、つまりいくらか高い声や低い声を出せるようになるということです。

しかし、もともと高い音域の声を、低い音域に変えることはできません。ところが声帯以外の、声を加工する部分、特にのど、口、舌、あごなどは、意識的にトレーニングすることによって、はたらきをかなり変えられます。

感じのいい声、感じのわるい声ということをいいますが、声帯から出る「もとの声」じたいは、だれの声も似たような「ベー」というような音です。声の感じがいいとかわるいとかは、その「音」を「声」に加工するところで決まるのです。

もっとも、実際に発声される「声」の感じがいいかわるいかは、「声」そのものというより、「しゃべり方」にあります。

たとえば「しゃがれ声」とか「カスレ声」というのは、よくないほうの声に分類されますが、「ハスキーな声」といえば、どっちかというと感じのいい声のほうに入るでしょう。

しかし、これはどちらも声の質としてはおなじです。聞きづらいのを「しゃがれ声」とか「カスレ声」といい、心地よく聞こえるのを「ハスキーな声」といっているだけです。

もとの声の質はおなじなのですから、「しゃがれ声」を「ハスキーな声」に変えることはできます。

「カン高い声」や「キンキン声」は、 つよいストレスがあると出やすい声です。
ストレスにさらされると、興奮して、全身の筋肉の緊張が高まります。声帯も筋肉ですから、やはり緊張します。いわばギターの弦をつよく張った状態になって、高くするどい声になります。

カン高い声やキンキン声の人は、いつもそういう声を出しているわけではなく、緊張しているときだけそういう声になるのです。仕事場では聞きづらい声を出している人が、プライベートでは落ち着いた、好感のもてる声で話すというのはよくあることです。

怒ったり、ウソをついたり、気取ったりするときにも、声帯が緊張します。そのために話す声が高くなったりカスレ声になったりします。

ヘタな俳優が舞台でセリフをいうときも、緊張のせいで、概して声は高くなります。
その結果、お芝居全体がウソっぽく、かっこわるくなります。

「感じがわるい声」しか出せない人はいないと思っています。
もしもわるいことがあるとすれば、それは声帯の責任ではなく、その他の部分の使い方がわるいのです。いってみれば不器用で、ストレスが声帯にかかりやすい人なんです。

さっきあげたネガティブな声は、さまざまな理由で聞きづらい声になっていますが、その原因を治せば、ポジティブな声にすべて変えることができます。


しゃべったり歌ったりしたときに、どなって聞こえたり声が大きくなりすぎたりする人はいませんか?声を出すと思った以上の音量になってしまい、小さな声が出せないのは、呼吸の調節がうまくできていないためです。

そこでストローを使って、自分の意思でソフトな声を出す練習をしてみましょう。まず、ストローを歯でくわえて、唇を閉じます。このとき気をつけることは、歯でストローを支える程度に軽くかむこと。ストローは、唇でしっかり固定することが大事です。

次にストローをくわえたまま「は、へ、ひ、ほ、ふ」と声を出します。そしてそれぞれの言葉の後に、「ハー」と息を抜くように発音すると、自然に空気の抜けたソフトな声が出るはずです。

うまく発音できるようになったら、最後にストローなしで声を出してみましょう。 言葉を発するときにやり方を身につければ、声の強弱も思いのまま。もっと表現の幅が広がります。


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